では、なぜ、新スタジアム構想が浮上しているのか。背景には、J1で戦う清水エスパルスのホームスタジアム「IAIスタジアム日本平」が抱える多くの課題がある。

メーンスタンドやゴール裏スタンドから富士山が一望でき、Jリーグのベストピッチ賞を実に9度も受賞した最高の環境を備えながら、老朽化に加え、観客席を覆う屋根がないなど、Jリーグの基準を満たしていない。
さらにアクセス面にも課題があり、新しいスタジアムを求める声は、日に日に高まっている。
「静岡・清水に、新しいスタジアムを」
この議論を振り返ると、決して、ここ2、3年の話ではないことがわかる。

「駅前や街なかに屋根付きの専用スタジアムがあったら」
野々村氏の前任、村井満チェアマンは2014年、静岡市役所に乗り込み、田辺信宏静岡市長に新スタジアム建設を“直談判”している。
田辺市長は、それから5年後の静岡市長選で「新サッカースタジアムの構想づくり」を公約に掲げたが、実際に費用をつけて調査を開始したのは、2021年度から。村井前チェアマンの訪問から7年もの年月が過ぎていた。
その後、スタジアム建設議論はどれほど進んでいるのか。着工はおろか、その予定地すら正式決定していない。多くの市民が期待を寄せるJR清水駅東口そばに広がる広大な工業用地も、あくまで“候補地”に過ぎない。