西之表市・馬毛島への自衛隊基地の整備と米軍の訓練移転を巡り、国は周辺の自然や生活環境への影響を調べる環境影響評価=「環境アセスメント」の手続きを進めています。

手続きは3段階あります。
まず自然や環境への影響をどのように調べるのかを記した「方法書」を地元に示します。
方法書に書かれた内容で実際に調査をした結果をまとめたものが「準備書」です。馬毛島の基地計画では先月、国がこの「準備書」を公開し、地元からの意見を聞く縦覧を行っています。
そして意見を聞いたうえで修正し、「評価書」にまとめ、問題ないとされた場合は事業が始まることになります。

訓練の概要や、騒音・生態系など19項目について影響を評価した「準備書」。総合評価で「適正」と結論づけられているものの、本当に「適正」なのか?専門家によって見方は分かれます。

準備書で国は馬毛島に2000メートルほどの2本の滑走路や駐機場、桟橋などを整備し、米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練=FCLPや、自衛隊の水陸両用車など13の訓練を行うとしています。工期はおおむね4年で、FCLPは滑走路などが完成次第、早ければ2026年度までに訓練を始めたいとしています。

外交・安全保障が専門の明海大学・小谷哲男教授は、準備書からその狙いが見えてくると話します。

(明海大学 小谷哲男教授)「自衛隊の護衛艦いずもを空母に変えF−35Bを載せる計画のための模擬訓練施設という位置づけが(馬毛島は)大きい。加えて偵察機や輸送機の運用もあり、偵察の拠点、物資の集積地として輸送機が飛んでくることになる」

今回の調査で注目されたのが騒音です。今回の騒音調査では、飛行ルートは馬毛島上空と周辺海域との想定で行われ、すべての地点で騒音は「基準値を下回る」と評価されました。ただ種子島上空を飛行した場合の騒音はどうなるのか?知事もその予測を求めていましたが、準備書には盛り込まれませんでした。

基地問題と地方自治が専門の明星大学・熊本博之教授は、種子島上空の飛行はあり得ると指摘します。

(明星大学 熊本博之教授)「(飛ばない)保証は何もない。日米地位協定で、米軍訓練で施設の利用はほぼ自由」

一方、小谷教授は。

(小谷教授)「もし種子島上空を飛ぶなら、気象条件が非常に悪い時など緊急事態。通常の訓練なら種子島上空を通る必要なく、離島の上空飛行は沖縄でもやっている。あえて種子島上空で飛ぶことにはならない」

また準備書では、戦闘機などがどんなルートで馬毛島にやって来るのか示されていません。県内各地で米軍機の低空飛行が目撃される中、騒音が問題となるケースは出ないのでしょうか?

(小谷教授)「安全性の問題と地元への配慮から九州本土や離島上を通らず、できるだけ海の上を通ると思う」

(熊本教授)「鹿児島市内、屋久島など島々の上空を通る可能性は否定できない。馬毛島周辺だけの騒音予測では不十分と言わざるを得ない」

専門家でも見方が分かれる環境アセスメント。ただ現在行われている「縦覧」が地元が意見を示す最後の機会となるだけに「国の丁寧な説明」と「住民の納得」という点では一致しています。

(小谷教授)「国の丁寧な説明は大前提。合理的な説明をして住民に納得してもらうことに尽きる」

(熊本教授)「国防政策に住民が意見を言う機会が与えられ、今回が最後のチャンス。ちゃんと理解し、意見を言うことが大事」

国は準備書を西之表市役所や県庁などで19日まで公開し、意見を受け付けています。また10日以降、種子島1市2町と屋久島町、南大隅町で住民説明会が開かれます。