使われていない農地を活用して農業を営み、県内では珍しい農作物を1人で育てている農家の方を紹介します。「農業でお金を稼ぎたい」ではなく、「美味しいものを作りたい」ことをモチベーションにする元調理師の農家の原動力を取材しました。

キャベツにサツマイモ、スナップエンドウ、パクチーとバラエティ豊かな野菜が並ぶ無人販売所。これらの野菜は1人の農家の手によって作られています。

農家の松原正尚さんです。

Qどんな思いで野菜を育てているか?
農家 松原正尚さん「どれだけ美味しいものを作れるか、料理人が手を加えずとも美味しいものを作れるかというのをひたすら探求していく感じ」

糸満市真壁で農業を営む松原さん。こちらの畑ではレタスやスナップエンドウ、じゃがいもやニンジンなど様々な野菜を作っています。

中にはこんなものも…。

Qこの列は何が植えられている?
松原さん「これは賀茂なすですね。沖縄では珍しい京都の丸いナスで、味噌田楽にしたら美味しいんですよね。沖縄ではまだなじみがないが美味しいので、食べてもらいたいというのと自分が好きなので」

大阪府出身の松原さん。元々、地元で料理人として働き、沖縄が好きで10年ほど前に糸満市真壁に移住。沖縄でも調理の仕事をしていましたが、その傍らで始めた農業にのめりこみ、今では365日働く農家です。

松原さん「たまたまこの畑を借りることが出来て、畑をやっているうちに美味しいものを作るというこの作業が楽しくて、すると栽培方法によって味が野菜は全然変わってくるので、それを追求しながら、生で食べてもおいしい野菜を作ろうと思い、農業にどっぷりハマっている感じです」

食材を扱う料理人から食材を作る農家へ。農業をやるうえで欠かせない畑は、知人から借りています。丁寧に作物を育て、農業に向き合う姿勢が地域の人に評価され、使われていない畑なども借りることが出来、今では5つの畑で作物を作っています。

松原さん「感謝しかないですね。移住してきているので、モノを借りたり、畑を借りたりというのはすごく信用がいることだと思うので」

使われていない農地を使い、農業を営むことは『陸の豊かさも守ろう』というSDGsの目標にもつながっています。

丹精込めて野菜や果物を作る松原さん。好奇心も旺盛で、これまでに栽培に挑戦した野菜や果物はなんと200種類以上になります。

松原さん「人と同じもの作っても面白くないし、美味しいものは手がかかって中々、生産できないものが多かったりするので、それを一から自分の手で作るという、ほかにはない味をどうにかして栽培で表現できないかなという感じで色々やっている」

近年は、沖縄では珍しいイチジクの栽培にも取り組んでいます。

松原さん「作り始めて、もう6年くらい。もう出荷もできるくらいになっている。1年目は全部枯らして2年目から少し収穫が出来るというくらいになった。まだ沖縄で認知度が低いのでこれからどんどん認知度を上げていきたい」

松原さんが手間暇をかけて作る野菜や果物、その味と姿勢にほれ込んだ県内外の飲食店から引き合いがあるほか、地域の人へ向けて無人販売所で売られ、日中は地域の人たちが続々と訪れます。

購入者「キャベツの匂いに私が敏感で、農薬のにおいとか敏感なんですが、ここのは無農薬なので、サラッとサラダで食べられるから気に入って買っています。時期によっては果物を置いてくれてたり、トマトなどもあって、全部無農薬なので子どもも小さいので助かっています」

農業が好きでちょっと珍しい美味しいものをみんなに届けたい。その思いで松原さんは作物たちに愛情を注ぎます。

Q新たに取り組んでいる作物は?
松原さん「お客さんからのリクエストでリンゴと、オリーブ、キウイも試してるんですけど、最終段階としては沖縄で内地のソメイヨシノを咲かせたいなというのが、一番の夢。沖縄でやっぱり僕ら内地から移住してきた人は馴染のあるあの花吹雪、桜吹雪を見てもらいたい、いつかここで実現させたい」