◆若い世代に見出した希望

鴨志田:昨日も、長崎の集会に高校生が何人も来てくれて、「冤罪のドラマを見て、このままじゃだめじゃないかと思った。なんで日本は法改正が遅いのか?」と質問をしてくれたんです。若い世代、高校生とか大学生とかがこういう問題にきちんと向き合って「これは変えなきゃ」と声を上げてくれることに、私は希望を見出したいと思いました。

神戸:多くの警察官・検察官は、真剣に取り組んでいる方が多いと思いますが、時にそういうことが起こり得る。それが明らかになろうとする時「組織防衛」をしてしまう、ということでしょうか?
鴨志田:まず隠す、そして先送りしようとする。組織の体質としてあるように思います。

神戸:情報をフラットに開示した上での裁判議論というのが根本的に欠けている中で、調べる側だけが証拠を持ち、手駒をいっぱい持っているのに、弁護側にはない。それでは、裁判としてバランスは取れてないですね。
鴨志田:はい、非常にアンフェアなところで戦うことを強いられてしまうということです。「疑わしい時は被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審にも適用される、ということを1975年に最高裁が言っているわけです。それからこんなに年月が経っても、まだ私達が無罪の証明をしなければならないほど再審のハードルを高くて、しかもその証拠も開示されない、手探りの中でやらなければいけない、ということが、いかにえん罪被害者を長く苦しめているか。多くの人に知ってほしいと思います。
鴨志田:今回のことがきっかけになって、再審法の改正とか、えん罪の救済の根本的な見直しのきっかけになってくると本当にいいなと思っています。


◆神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年、群馬県生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。