水口さんの会社、タグボートの本来の業務は、平川市の温浴施設、「津軽おのえ温泉福家」の運営です。2014年に前のオーナーから事業を引き継ぎ、江戸情緒あふれる施設と自慢の湯、そして様々な仕掛けで、順調に客足を伸ばしてきました。しかし、新型コロナの影響で売り上げが落ち込んだことで、水口さんは事業の再構築を目指し、2022年3月、異業種のシードル製造を開始しました。

そして、そこには地域の課題解決への思いを込めました。

※水口代表「スタッフの雇用を生かしながら新しいこの地域課題も一緒に解決できるような事業って何なんだろうと思ったときに、やっぱりリンゴの一大産業である平川市であってそのリンゴ産業が未来をどうやって生きのびていくかっていうことを考えたときに、この地域に、やっぱり、リンゴを加工したお酒の事業が必然的に必要なんだろうなって思ったのがきっかけ」

こうして誕生した青森県内初の「ハードサイダー」。当初は、月に2000本程度の販売を見込んでいましたが、2022年9月に、青森県の特産品コンクールで最高賞の知事賞を受賞するなど、その味が評価されると次第に知名度もあがり、いまでは月平均8000本を売り上げるまでの人気商品に成長しました。

もちろん温泉施設の売店では、看板商品に据え、レストランでは湯上がりの体を冷ます一杯としておいしい料理とともに堪能することができます。

※河村庸市キャスター「それではクレイジーサイダーのドライをいただきます。喉越しがキリッとしています。ただその中にもリンゴのほんのりとした甘みが感じられます。これだけ辛口だと幅広い食事に合いそうです」

地域の雇用の確保と産業の持続への思いが実を結びはじめたことで、水口さんは次の目標を販路の拡大に据え、ことしから県外の物産展などに積極的に出品しています。

そして3月3日。地域経済にとって重要な役割を果たす食品を表彰する全国コンクールの新製品開発部門で、クレイジサイダーが食品産業センター会長賞を受賞。製造から1年未満ながら青森県を代表するシードルに認められた証です。

現状は通過点と考えながらも水口さんはシードル工場の担う未来をこう思い描いています。

※水口代表「生で食べるリンゴ生産以外に加工用のリンゴ園地っていうのをこれから増やしていくことで平川市の園地が縮小するのを防ぐっていう一助にはなれるんじゃないか」

これまでになかった辛口の県産シードルがこれからさらに広まっていくといいですね。クレイジーサイダーは1本660円で青森市アスパムなどの土産物店や一部の道の駅、オンライン販売もしています。