車の中に子ども2人を放置し、死亡させた罪に問われた母親の裁判員裁判で、裁判所は懲役3年6か月の判決を言い渡しました。自らの過ちで幼い命を奪ってしまった母親ですが、事件を防ぐことはできなかったのでしょうか。
去年7月、厚木市で交際相手の家の駐車場にとめた車の中に長女の姫梛ちゃん(2)と長男の煌翔ちゃん(1)を置き去りにし、熱中症で死亡させた罪に問われた長沢麗奈被告(22)。
きょう、裁判所は「一般的な虐待事案と一線を画す」として、懲役3年6か月の実刑判決を言い渡しました。裁判で明らかになったのは母親としての「未熟さ」でした。
長沢被告
「車のエアコンをつけていたから大丈夫だと思っていた。交際相手から引き留められ、自分の気持ちを優先してしまった」
シングルマザーとして2人の子どもを育てていた長沢被告は、事件の3週間前にも車の中に煌翔ちゃんを置き去りにし、児童相談所から通告を受けていました。
しかし、子どもを愛していなかったわけではありませんでした。
これまでの裁判では、我が子の名前を必死に呼び続け、命を救おうとする長沢被告と消防のやりとりを録音した音声が流され、これを聞いた長沢被告が顔を真っ赤にして涙を流す場面もありました。
判決後、裁判長は。
裁判長
「あなたは物を知らない、考えが足りない、大人として『未熟』です。いい大人になってもらいたいと強く念じております」
大人としても母親としても「未熟」だと、強く諭したのです。
今回の事件を防ぐ方法はなかったのでしょうか。児童虐待の専門家は…
東洋大学 鈴木崇之教授
「地域の子育て支援と切れてしまっていて、その中で起こってしまった非常に不幸な事件。昔は地域で様々な人に手伝ってもらえていたけども、みんなで子育てをしていく文化が失われてしまっておりますので、そこのところを何らかの社会的な仕組みで補っていきたいと」
児相や警察とは違う「地域の目」。支援が必要な家庭を支え、社会から孤立することを防ぐ取り組みがあります。
東京・大田区の社会福祉法人が行っている「こども宅食」です。支援を必要としている家庭に月に一度、食料を届けています。加えて、もうひとつ大切な役割があると言います。
ボランティア 百田文さん
「近所のおばちゃんが行って、ちょっと立ち話するみたいな、そういう中から困ってることがないかなって」
届ける際に相手と話す時間を作ることで、会話の中から些細な異変にもいち早く気づくことができるといいます。
ボランティア 百田文さん
「何も資格がないから何もできないけれど、専門の方の手が届かないところ、手が回らないところを支えるって言ったらちょっとおこがましいけど、助けられたらいいなと」
利用者は…
2人を育てる シングルマザー
「子どもたちの好きなものとかも聞いてくださったりとか、食事の他にお菓子があったり、たまに学用品をいただけるのでとても助かって。結構、私は『こまってます』って言えるようなタイプなので、でも言えない人もいるじゃないですか、(支援があると)繋がっていられるっていうか」
助けを必要とする母と子を孤立させないために社会全体で見守る施策が求められています。
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