実は寒い時期に忙しいのがそうめん作り。有名セレクトショップや海外でも人気だというそうめんが熊本市で作られています。最大の特徴はその細さ。何と18秒で茹で上がるんです。いったいどのように作っているのか取材しました。

その「そうめん」が作られているのは熊本市南区。

しかし看板は…見当たりません。

麺舗ゆきやぎ 古瀬信俊さん「わざわざ来てもらうと断れんもんで、だから看板出してまではやっていません。北海道の札幌からも『このために来ました』と車で来られました」

そう話すのは「麺舗(めんぽ) ゆきやぎ」2代目の古瀬信俊(ふるせ のぶとし)さんです。そうめん処として知られる長崎県島原市出身の先代から引き継いで40年以上になります。

古瀬さん「親父と交代してから、どうせ作るなら良いのを 作ろうってことで試行錯誤で」

古瀬さんがさらに独自の工夫を重ね完成させたのが「ゆきやぎ」です。

商品名は「ユキヤナギ」という白く流れるように咲く花からつけました。

「ゆきやぎ」の一番の特徴はこの細さです。

一般的な「そうめん」と比較してみると…

およそ0.6mm、針の穴にも通ってしまう細さです。

ただし「細ければ良い」というわけではなく…

古瀬さん「細くしようと思えば、これの半分くらいにできる。でも、今の細さが食感的に一番良い大きさ。のどごしやきれいさも考えて」

細くて美しい「ゆきやぎ」は京都の老舗料亭で長年使い続けられています。さらに…

古瀬さん「上海でも食べてもらってます。高級スーパーで販売していると聞いています。中国にもそうめんはあるけど、これだけ細くてコシの強いそうめんはないと言われました」

その「コシ」のヒミツは 海外から仕入れた強力粉。

古瀬さん「(中力粉は)グルテンの量が少なくて引きがあまりないので、麺が細い分、柔らかくなってしまう」

小麦粉で作る麺は中力粉を使うことが多い中、古瀬さんはあえて強力粉にこだわっています。

古瀬さん「食べたときの食感と味が良くなるから」

毎朝6時から生地をつくる作業を開始。

古瀬さん「その日の気温と湿度で変わる。全部自分の勘でしている」

作業場のカレンダーには毎日、気温や湿度・入れた塩水の量を細かく記入。

古瀬さん「今年のカレンダーをかけて、2年分は別にとっている。ここがおかしいと思った時に去年や一昨年のカレンダーを見る」

練り上げた生地は熟成させ午後から「手延べ」の工程に。熟成具合を確かめながら、繰り返し細く細く伸ばしていきます

すると、作業中だった古瀬さんが突如中断して別の部屋へ。

古瀬さん「乾燥の具合を見るために5分に1回ぐらい確認に来っとたい」

古瀬さんは、時間を管理しながら湿度を二段階に分けて乾燥作業を行っています。

古瀬さん「(除湿機を使う)中から水分を抜いていく。自分たちの理想通りの乾燥をしてくれる」

製造から箱詰めまで古瀬さん家族が手作業で行います。1日に作るのは1200束ほどです。

古瀬さん「そうめん屋さんとして少ないでしょうね。とにかく手がかかるもんで」

こうして、手間暇かけて出来上がった「ゆきやぎ」は…

妻・明美さん「18秒ぐらいで茹であがります」

なんと茹で時間はおよそ18秒!よく沸騰したお湯に入れるのがポイントです。そしてあっという間に…

明美さん「できました」

もみ洗いもおいしく食べるコツ。「ゆきやぎ」のコシを堪能できる「冷や」の完成です。

そして、まだ肌寒いこの時期に古瀬家イチオシが「にゅうめん」だしの入った鍋に「ゆきやぎ」をそのまま入れます。そこに溶き卵。すぐに火を止めて、ごま油とネギをちらせば完成。

明美さん「(麺から)塩気が出るので薄味でも大丈夫だと思います」

「にゅう麺」の茹で時間は「冷や」より短くて大丈夫。さっとできちゃいます。

古瀬さん「あんまり周りのこと考えんけん、比べんけん分からんけど(ゆきやぎは)自分のベストの細さだと思う」