「培養肉」開発の最前線、シンガポールではレストランも。日本ではバイオフォアグラ開発中

培養肉はどこまで本物に近づけるのか。世界で唯一、一般の人でも培養肉が食べられるシンガポールを取材した。シンガポールの高級住宅街に世界で唯一培養肉を使った料理を提供しているレストランがある。2023年1月から毎週木曜限定で培養肉を使ったサラダやクスクスなどエスニック料理が楽しめる。

レストランはシンガポール政府の認可を受けたアメリカのフードテックのベンチャー企業から培養肉を仕入れている。2種類あるメニューの値段はどちらも21.98シンガポールドル、日本円で約2200円だ。店を訪れた客からは「言われなければ普通の鶏肉だと思うと思う」「普通の肉とも同じ市場で戦える強い商品になると思う」との声が聞かれた。
レストランに併設されている精肉店でも購入可能で、値段は一串で5.5シンガポールドル、日本円で約550円で、価格は本物の鶏肉を使ったものとほぼ同じだという。レストランでこの価格で提供できるのはシンガポール政府がアメリカのベンチャー企業に対し助成金を支給していることも背景にある。

最先端の食品技術を駆使した培養肉の課題の一つがコストだ。高級食材のフォアグラは、アヒルに強制的に餌を与え肝臓を肥大させることから、ヨーロッパで次々と生産が禁止されているため、その代替食品に注目が集まっている。都内のホテルで関係者を対象にしたバイオフォアグラの評価会を主催したベンチャー企業「インテグリカルチャー」は、アヒルの体内環境を4つのタンクを使った独自技術で再現することに成功した。培養肉に不可欠な動物由来の血清や成長を促す成分がコストになるが、体内環境を再現したことで、それらを使わず培養することを可能にした。

インテグリカルチャー 川島一公最高技術責任者:
バイオテックのコストを上げる理由として成長因子や血清成分があるのですが、私たちは体の中の環境を作る技術を完成させたので、そこのコストは無視していい状態になったと。従って値段は順次下げていくことができると考えています。
インテグリカルチャーは2023年中に毎月8キロの培養フォアグラを安定的に生産することを目指すとしており、25年の大阪万博までには消費者に提供したいとしている。培養肉の市場は今、急速に広がりを見せている。