将来必ず起きるとされている南海トラフ地震。誰もが安心して避難生活を送る環境を作るためには、女性の声や多様な視点が重要だといわれています。災害時に誰ひとり取り残さないために!いま、女性リーダーを育成するプロジェクトが進められています。

防災に関心のある女性を対象に、防災・減災に関する様々な講座を行っている「女性防災プロジェクト」。受講生たちが、災害発生前後のタイムラインや避難所運営などについて学んでいます。

プロジェクトが始まった背景は、東日本大震災をはじめとした大規模災害時に、避難所で「女性の声が行き届いていない」という意見が挙がったことでした。着替えをはじめとしたプライバシーの確保や、女性専用の衛生用品に関することなど、避難生活の難しさや課題が浮き彫りとなったのです。

こうしたことから、こうち男女共同参画センター「ソーレ」では、女性の視点での意見が避難生活に反映できるよう、2017年度から女性リーダーを育成するプロジェクトに取り組んでいます。

プロジェクトで指導にあたってきたのが、高知県立大学看護学部の神原咲子特任教授です。神原特任教授は近年の防災について、「地域を知ることが求められている」と話します。

(高知県立大学 看護学部 神原咲子 特任教授)
「『この地域にお年寄りはいないだろう』『あそこの人は目が見えないけど私は何もすることが分からないから何もしない』といったらその人たちは助からない。日頃からいい関係でコミュニケーションが取れていたら、災害時にもそれが武器になる。」
「高齢化をしている地域、外国人が多い地域、いつもとりこぼされているといわれている障がい者がいる中での防災が課題。いざ災害が起きた時にはいろんな人たちが一丸となって共助ができるということが求められている。男性だと地域の外に出ている方が多くて『地域でここに行けば大丈夫』『この人につながれば大丈夫』ということを知らない方もたくさんいる。そのような中で、女性の声や多様な視点が非常に重要だといわれている。“生活者視点”がすごく強い。そこを十分に発揮することが避難所運営や生活再建に大事だと思っているので、災害があってもなくても良くしていけるというリーダーが必要じゃないか」

受講生たちはこの日、避難できる場所の洗い出しや、避難生活に何が必要かを話し合い、災害発生時や避難生活のイメージを膨らませていました。

「(避難する場所は)自分たちがよく行っている所ですよね。全然使ったことのない所って行きづらいですよね」
「1回も行ったことのない所はたぶん行けないですよね」
「子どもはおもちゃがないと1週間はつらいと思う」
「フォークとスプーンは子ども用じゃないと食べられない」

講座を通して受講生たちは、いろいろな「気づき」があったようです。

(受講生)
「『自主防災組織に参加しなければいけない』『こうしなければいけない』と思っていた部分があったんですけど、皆さんといろいろ話している中で、“自分ができることから少しずつ始めたらいいんだ”。いろんな情報を入れておくと実際(災害が)起こった時に役に立つかなという情報源をいただいてすごくありがたかった」
「主にケアをすることが女性は多いかなと思うんですけど、ケアの視点で防災を見るというのが大事だなと感じました。災害はあってもなるべくふだんどおりに生活できるような環境を整えていけたらいいなと思います」

これまで高知市内だけで行われてきた「女性防災プロジェクト」。来年度から2年間、県東部や西部でも実施され、受講生が被災地を視察する事業も行われることになっています。高知の未来を守る女性リーダーを育成することで、「誰ひとり取り残さない防災」が期待されています。

(女性防災プロジェクト講師 高知県立大学看護学部 神原咲子 特任教授)
「『ちょっとこれをしておけば大丈夫だよね、安心だよね』という“安心”を増やすようなことを地域でそれぞれがリーダーとなって活動を起こせるところへのモチベーションや実際の方法を享受できるような内容になっている。そういう人たちが“地域で輝く”ということを期待しています」