LGBTQなど性的マイノリティの方々について、様々な取り組みが広がっていますが、その中の1つ、「LGBTQフレンドリーな葬送ガイドブック」に注目しました。
「LGBTQフレンドリーな葬送ガイドブック」は、セクシャルマイノリティのカップルが、臨終や葬儀、相続などのいわゆる“エンディング”に直面した際、残されたパートナーが困らないために、まとめられたものです。作成の中心となったのは、「供養のカタチ」という会社の代表、石原千晶(いしはら ちあき)さん。主に火葬した遺骨のその後の供養の形を提案するザポートやコーディネートなどを行っている石原さんに、この「ガイドブック」を作ることになったきっかけを伺いました。

「ガイドブック」が出来るまで

「供養のカタチ」代表 石原千晶さん
「LGBTQの当事者の方たちが、例えばパートナーの葬式に呼んでもらえなかったらしいですよ、何かそういうことがあったらしいですよというのは、業界内に居ると、チラホラとは聞こえてはくるんですよね。知り合いではなくても。そういう困ってる人たち、嫌な思いをしている人たちがいるんだなということは、把握はできてくるんです。ただ、それに向かって大きな一歩を踏み出そうという人はあまり居なかったんです」

そこで石原さんは、話を当事者に聞いてみることを思い立ち、50人ほどのセクシャルマイノリティの方に、“エンディング”で困ったことや不安に思っていることなどの聞き取りを行いました。すると、多くの方が悩みや苦しみを抱いていることが明らかになったと言います。
パートナーの「臨終に立ち会わせてもらえなかった」「葬儀に参列させてもらえなかった」「遺骨をもらえなかった」「同じお墓に入れなかった」といった経験をされた方が多かったり、日頃から、「自分が亡くなった時に、財産がパートナーにちゃんと渡るのか?」などと不安に思ったり…。
そこで石原さんは、そうした苦しみや不安を軽減するためのツールとして、「ガイドブック」の作成に取り掛かったわけです。この「ガイドブック」のプロジェクトはおととし立ち上げられ、去年8月にリリースされました。

パートナーの急逝と悔恨

「ガイドブック」では、実際に悲しい思いをした当事者として、名古屋でフラワーショップとゲイバーを営む、たかしさんの声を紹介しています。たかしさんは、10年以上生活を共にしたパートナーの男性を2020年の6月、心筋梗塞による“突然死”という形で失いました。パートナーの葬儀は、両親など親族によって執り行われましたが、たかしさんはこんな形で参列したと言います。

たかしさん
「友人の1人として、何人かでお参りさせていただいて、その時、パートナーのご両親には頭を下げましたが、何も喋ることもなく終わったんです。自分があまりにも嗚咽みたいに泣くんで、申し訳ないなと思って、ちょっと1回外出たんですけど…」

一番近くに居た存在だったのに、こんな形でしか参列できなかった。通夜の後にパートナーの両親などから優しい声を掛けられ、お墓に納骨をしたという連絡はあったものの、一周忌の際は誰からも知らされることがありませんでした。

たかしさんは暫くの間、自分たちの10年間は何だったのか?と悩み苦しむことになりました。

たかしさんは、自分より一回りほど年下のパートナーに冗談めかして「老後は頼んだよ」と言うことはありましたが、大切な相手とは、お互いに何かあった時のことを真剣に話し合っておく必要があったと感じています。

これは男女の夫婦やカップルであっても同じことではありますが、特に法律的な婚姻関係を結ぶことができない自分たちのようなカップルは、本当にそれが必要だったと語ります。

たかしさん
「『ボクと付き合って下さい』という言葉と同じぐらいに、あの、もう1回愛の告白だと思うので、こんなに好きだからこういう話をするという意味だと思うので、皆さんも早めにそういうことは、考えてお話するのもいいのかなと思います」

たかしさんのような思いをしないためのサジェスチョンが、この「ガイドブック」では行われています。支援団体や弁護士、僧侶などの監修によって、例えばパートナーに自分の葬儀や納骨など手続きを任せたい場合は、「死後事務委任契約」、自分の遺産をパートナーに相続させたい場合は、「公正証書遺言」といった風に、用意すべきものが紹介されています。