2022年まで25年間、県内の病院で看護師として働いていた上田さん、民間救急の仕事を始めたきっかけは、辛い治療を続ける入院患者たちの「家に帰りたい」という思いでした。

上田さん「家族だけでは患者の送迎は不安というのがまず1つ。あとは、移動する連れて帰る手段がない。それを考えた時に移動ができてスタッフも付いてとなると、もう自分がやるしかないなと」

多い時には1日に5~6件の依頼に対応します。その中で最近増えているのが新型コロナウイルスへの感染が疑われる利用者です。この日も、自力では移動が困難な発熱患者を病院へと送ります。

上田さん「熱がありますか?」
利用者「ゆうべから少しだけ」
上田さん「咳は?」
利用者「咳はそうでもないです」

新型コロナの感染者が多くひっ迫した状況が続く消防の救急現場。熊本市消防局での救急搬送困難事案は1月2日からのおよそ1か月で456件。その4割ほどが新型コロナの疑いがある患者でした。

上田さんは民間救急の活用で公的な救急の負担を減らしたいと話します。

上田さん「民間救急というのがどういうサービスを受けられるかという認知度が非常に低いので、まず皆さんにどういうものか知って頂くことがまず第一だと思っています」

そんな上田さんが民間救急の認知度をあげるため新たに始めたのが、介護が必要な生徒の学校への送迎です。

これまで母親が毎朝、往復1時間半かけて 車いすに乗る息子を支援学校へ送っていました。

男子生徒の母親「毎日、私が朝から送って、帰って5分もしないうちに仕事にいくっていうような感じで、バタバタして過ごしていました」

こうした保護者たちの負担を減らそうと、県内のNPO法人が上田さんと協力し無償での送迎サービスをスタートさせました。

上田さんは消防による救急や病院とは違う形で利用者の健康を支え、ニーズに応えられるよう民間救急の活動を続けています。