2020年の7月豪雨で被災した熊本県芦北町の旅館が営業を再開しました。生まれ変わった宿、そこにはこんな秘策がありました。

まるで南国リゾートのような明るい館内。

訪れた宿泊客が連れているのは可愛らしいワンちゃん。

実はここ「わんこ」が主役の宿なんです。

利用者「ワンちゃん用の温泉プールもあると聞いたのですごく楽しみです。基本どこでも一緒に出掛けるので本当にこういう施設はありがたい」

宿泊客を元気な声で迎えているのが宿の主人・田中 正一(たなか しょういち)さんです。

この日は代々140年続いてきた野坂屋(のざかや)旅館、再出発の日でした。

野坂屋旅館 田中 正一 社長「うれしいです。(豪雨災害があった2020年)7月3日以来のお出迎えになりますね」

野坂屋旅館は、2020年7月に県南を襲った豪雨で近くを流れる佐敷川が氾濫し、1階部分が完全に水没しました。

田中社長「午前4時か4時半ごろになると堤防を越えて川が流れはじめて、本当に何から手を付けていいのか分からなくて」

それでも「生まれ育ったふるさとに活気を取り戻したい」その一念が田中さんの背中を押し続けました。

田中社長「(先代から)野坂屋という旗挙げをして今まで続いてきた。芦北という町自体が俺にとって野坂屋旅館と同じくらい大事」

宿に新たな魅力を加えたいと考えた田中さん、友人などのアドバイスを受け「ワンコと泊まれる温泉旅館」の再建を目指して、元の場所から約4キロ離れた我が家の土地に望みを託しました。

田中社長「賭けてみようと思って。温泉も掘って。400メートルで37.4度の温泉が出た」

そして2023年1月、ついに完成した温泉旅館。再開初日から宿泊客が続々とやってきました。

八代市からやってきたわんこの「フクちゃん」はさっそく部屋を点検。気に入ってくれたかな?

宿には広々としたドッグランも完備していて、のびのびと過ごせそうです。

田中さん自らが腕を振るう夕食ではこんなサプライズも。

田中社長「お刺身で残った白身魚を低温調理して、ワンちゃんの料理を盛りつけ中です」

一方、宿泊客に提供する料理は芦北町の海の幸をふんだんに使用します。

田中社長「タチウオとカンパチ、それからタコがきょうのお刺身です」

田中さんはこの新たな旅館で芦北町の魅力を発信していきたいと語ります。

田中社長「こういうきっかけで芦北町をもっと少しでも色んな人に知ってもらって、芦北町っていいところって思ってもらいたい」