今年8月、栃木県の東武日光線・新鹿沼駅で作業員4人が死亡した事故。東武鉄道がまとめた中間報告書では、作業の前に待避場所の打ち合わせが行われないなど、ずさんな安全管理の実態が明らかになりました。

この事故は今年8月20日、新鹿沼駅の線路上で除草作業中の男性作業員4人がホームに入ってきた特急列車「スペーシアX」と接触し、死亡したものです。

東武鉄道は9月30日、国土交通省の関東運輸局に事故原因などについての中間報告書を提出しました。

■事前に待避場所を決めず

報告書によりますと、そもそも現場では列車が進入する際の待避場所が事前に決められていなかったといいます。

除草作業は、新鹿沼駅の下り線を東京方面へ進んだあと、一つ目の踏切で折り返し、事故現場となった駅に向かって上り線を進む計画でした。

事前の朝礼で、上り線で作業する間の待避場所を確認する予定でしたが、打ち合わせは行われず、待避場所は決まらないまま、事故の起きるおよそ5分前、作業員らは駅のホーム下の線路に入りました。

■「指揮」を上司に委ねる

なぜ、待避場所などを決める打ち合わせが行われなかったのか。東武鉄道は、現場責任者にあたる「作業指揮者」が“指揮”の業務を現場にいた上司に委ねていたためだと説明しています。

この「作業指揮者」は東武鉄道の子会社・東武建設の社員で、移動しながらの作業の指揮はこの日が初めてだったといいます。

一方、現場の指揮を委ねられた上司は作業経験が豊富な東武建設社員で、別の日の作業を含めた一連の除草作業全体の責任者にあたる立場でしたが、事故当日は非番でした。

しかし、現場に現れた上司は、指揮を委ねられたにもかかわらず、待避場所などを決める打ち合わせを行わず、「作業指揮者」も本来の業務である待避場所などの確認をしないまま、作業員らとともに事故現場へと向かいました。

■亡くなった作業員らはホームに背をつけ…

駅のホームの端に到達したあと、上司は作業員らに対し、ホーム下の線路に入るよう指示。上司は作業員とともに線路上で作業を行いました。このおよそ5分後に事故が起き、上司ら4人が亡くなりました。

列車の運転士は事故直前、死亡した作業員らが背をホームにつけて寄りかかるようにしてその場に止まっていたのが見えたといいます。

しかし、「列車見張り員」が「安全」の合図を示したことを確認し、規定に従って安全だと判断したと証言しているということです。

一方、「列車見張り員」の近くを歩いていた作業員2人は見張り員によるブザーと呼びかけを聞いてホーム上に避難したといい、亡くなった4人とともに線路に入り最後尾にいた「作業指揮者」は、見張り員から呼びかけは聞こえなかったものの、「ふと目線をあげたときに列車が接近していた」ことからホーム上に上がったということです。

■作業員ら疑問視も「意見すると怒られる」

事故のおよそ5分前にホーム下の線路に入るよう指示されたことについて、一部の作業員は列車が来るまでの時間が短く、疑問に感じていたといいます。

しかし、作業員らは「意見を述べると怒られる」「余計なことを言うと揉め事になる」などと思って、指示に従ったということです。

東武鉄道は今後、第三者による委員会を立ち上げて、事故原因や再発防止策などをさらに詳しく検討していく方針です。