訪れる客が思わず笑顔になる名物そば。その一杯を求めて人々が集うのが、桑折町にある老舗、割烹「仙台屋」です。130年近くの歴史を誇るこの店は、地域と共に歩み、時代に合わせて形を変えながら、温かいおもてなしの心を守り続けています。

三代目が守る伝統の味

長い歴史の中で仙台屋がたどり着いたこだわりの一品が、地元のそば粉を10割で使う手打ちそばです。

「うちのそばは桑折町で採れた、地場の半田銀山そばを10割で使用してます」と鈴木さんは説明します。半田銀山そばは、かつて日本有数の銀の産出量を誇った名峰・半田山の麓で、澄んだ風土と豊かな水に育まれて作られます。

一番人気は、このそばを使った「天ぷらそば」。使用されているのは、香りと強い甘みが特徴の「会津のかおり」という品種です。透き通るような美しい見た目のそばは、手打ちならではの繊細さ。噛むたびに甘みが広がり、のど越しも格別です。サクサクの天ぷらは素材の甘みが際立ち、そばとの相性も抜群です。

この半田銀山そばの背景には、地域を元気にするための物語がありました。東日本大震災後、荒れ地になってしまう放棄農地をなんとかしたいと、地域の有志が立ち上がったのです。生育が早く雑草を抑えるそばを蒔くことで農地を守り、さらに、咲き誇るそばの美しい花が地域に癒やしを提供できるのではないかと考えました。こうして発足した「そば会」の活動が実を結び、15年の時を経て、半田銀山そばは今や桑折町を代表するブランドへと成長しました。

変わらぬおもてなしと新たな挑戦

仙台屋は、その丁寧な仕事を守るため、完全予約制を貫いています。それは、昔から強く受け継がれてきた思いがあるからです。「一組様に対して、しっかりと丁寧にご要望をお聞きしながら、寄り添ったお食事のメニューや会場のご提案などをさせていただけるために、こちらを守ってやっております」と鈴木さんは話します。

丁寧なおもてなしを心がける一方、仙台屋をより身近に感じてもらうための新たな挑戦も始まっています。それが、新ブランド「六角屋」です。

店の住所である「六角」から名付けられたこのブランドは、鈴木さんが修行で培った技術を活かし、出汁に徹底的にこだわったお弁当屋さんです。和食中心の歴史とは少し毛色の違う挑戦として、「お出汁にこだわったお弁当をやりたいなと思って」と鈴木さんは語ります。

現在は、出汁を効かせたかにごはん弁当と、牛肉の旨味がたっぷりな牛すき焼弁当の2種類。どちらにも共通して入っているのが、長年の修行で培った技術で作るだし巻き卵です。出汁がじゅわっと染み込んだ卵はふわふわで、口いっぱいにその風味が広がります。だし巻きだけの折り詰めも用意されています。

家族でつなぐ、未来へのバトン

鈴木さんの挑戦を、両親は温かく見守っています。母は「いつの間にか、頼りになるような形に成長してるので、主人と一緒にできるだけのサポートをね、できればと。大切なものを守るっていうことも大事だったと思うんですけど、それを形を変えて、これからまた続けていってもらいたいな」と期待を寄せます。

その思いを受け、鈴木さんもまた、両親への感謝と敬意を口にします。「お店のことを第一に考えながら、地域を大事にしていく、この姿勢はまだまだ私、勉強していかなきゃいけないなと思ってるので、まだ教えてもらうことばっかりだから、一緒にもうちょっと頑張っていきたいなと思います」。

地域を愛し、家族の縁を守り続ける老舗、仙台屋。地元に根ざしたその温かい空間は、これからもたくさんの人々に愛され続けることでしょう。

『ステップ』 
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2026年9月24日放送回より)