意志不明の父に『出口伍長!ここに手を付け!』

父の心がいかに戦争に支配されていたのか出口さんが実感したのは、一さんが94歳の時のことでした。

出口敬子さん
「私が見たときはここで倒れていた。父はね」

夜中に自宅の階段から落ち、意識を失った一さん。

何をしても意識が戻らず、駆けつけた出口さんが最後に取った手段は、戦時中の記憶を呼び起こすことでした。

出口敬子さん
「『出口伍長!ここに手を付け!』と言ったらこうして立ち上がるんですよ。そしてこちら側に私が父の腰を支えて行かせて、『そこから匍匐前進はじめ!』と言ったら上っていきましたね。軍隊は命令に服従しないとビンタされると。それくらいは父から聞いていたから」

辛い記憶を呼び起こすことに罪悪感を感じながらも、命を救うための苦肉の策でした。

出口敬子さん
「『起床!』って言ったもんね横で。そしたら目が動き出したからこれでいいと思って。かわいそうだったですけど。本当に命令にこんなんしよったんやな」