■「自分の言葉が偽物に思えた」 伝承者を志したカンボジアでの葛藤

松野さんは太平洋戦争末期の1944年生まれで、広島市で約40年、小学校の教壇に立ちました。

【提供】松野厚子さん

定年後に取り組んだボランティア活動の中で、カンボジアの人たちとの交流が生まれます。

訪れたカンボジアは長年内戦が続き、終結から30年以上経った現在も、農村部を中心に地雷や不発弾の撤去作業が続いていました。

カンボジアで見つかった地雷

戦争の傷跡が今なお残るその地で、現地の青年から受けたある質問に、松野さんは上手く答えることができませんでした。

それが「被爆体験伝承者」を志すきっかけとなります。

「カンボジアの青年が『広島はどうしてそんなに早く復興したんですか?』と質問をした。それは『みんなで力を合わせて』くらいのことしか言えなくて。自分の言ったことが偽物というか。もう少し勉強したいなと」

3年間の研修を経て、2018年に「被爆体験伝承者」となり、最初に受け継いだのが笠岡さんの体験でした。

「社会を作ってくれる子どもたちに被爆者の思いを、笠岡さんの思いを伝えていきたいなと。笠岡さんと同じような立場で繋いでいきたいなと思った」