衆議院議員選挙で4分の3以上の議席を連立与党で獲得しながらも参議院では少数与党のため、与野党の対立で特別国会は“延長戦”に突入。「国旗損壊罪」「皇室典範改正」「消費税減税」などの重要テーマに対し、党内や国会では熟議が行われていたのか、また外交面ではアメリカ、中国の2つの大国と、どう付き合っていくことが重要か、前外務大臣の岩屋毅氏に聞いた。(聞き手:川戸恵子 収録:7月22日)

国旗損壊罪採決を棄権「立法事実なく、必然性がない」

ーー与党が4分の3以上の議席を占める中、延長国会で自民から党内議論が全然出てこないように感じますが。

岩屋毅 前外務大臣:
本来の自民党であれば、今回国会に出したような「国旗損壊罪」も「副首都(法案)」も、あるいは「皇室典範」もそうかもしれませんが、拙速を避けるべきだという判断がまず立つと思うんですね。党内で熟議をして、間違いのない判断を下さないといけない。これが自民党の良識、見識だと思いますし、それを発揮できないようであれば、自民党が自民党である理由が立たないと私は思います。

ーー国旗損壊罪については公然と意見を述べられて、なおかつ棄権なさいました。

岩屋毅 前外務大臣:
我々の周りで国旗が焼かれたり、破られたりしたのを見たことある人います?だからまず、立法事実がないと私は言っているんですよ。その必要性、必然性がまずない。それから、これは小さいことのように見えて大きなことだということで私も出ていき、意見を申し上げたのですけれども。戦後の自由そして民主主義というものの根幹を突き崩すおそれがある。憲法の保障する国民の自由な意見の表明、表現の自由といったものを侵すおそれがあるという心配をしたから、一貫して慎重論を唱えてきたわけです。最終的には、党が決めたことですから反対はしないけれども、賛成はしないというので、棄権をするという判断をしたところです。

憲政上に「禍根・汚点を残す」 定数削減「廃案にすべき」

ーー積み残された法案、例えば「定数削減」は継続して議論していくのでしょうか?

岩屋毅 前外務大臣:
これについても突然、比例だけを45議席減らすなんていうのは乱暴に過ぎるということを私は一貫して言ってきたわけです。国会対策上の都合もあり、先送りということにしたわけですが、私は廃案にすべきだと思っております。選挙制度というのは全ての政党会派に共通する土台ですから、与党の力だけで数の力で押し切っていいなどというテーマではないんですね。自民党はこれまでそんなことをしたことはありません。もし仮にそんなことをやれば、私は憲政上に禍根を残す、大きな汚点を残すと思っております。従ってせっかく今、衆議院議長のもとに各党協議会ができているわけですから、果たして現行制度を手直しをするのか、あるいは抜本的な選挙制度改革をやるのか、そこでしっかり議論をするということがまず大事だと思います。

食料品消費税ゼロ「減税ポピュリズム」 物価高対策には給付を

ーーもうひとつ問題となっている食料品の消費税ゼロ。党首討論では、高市総理は国民会議に任せるという感じでしたが、これも紛糾していますよね。

岩屋毅 前外務大臣:
これは選挙のときの減税ポピュリズムですよね。ご承知のように我々自民党、野党だったときに野田民主党そして自民党、公明党が「消費税は社会保障のために必要だよね」と、「将来10%にしていき子育てにも使おうよね」という合意をした3党がこぞって減税を唱えるという、そこがもう最初から間違いだと私は思います。だから、私は選挙中1回も消費税減税を唱えたことはありません。それでなくても日本の今の財政運営というのはマーケットから厳しい目で見られている中で、財源のあてもなく社会保障の基幹財源というものを2年間で10兆円減らしていくということについて、私は極めて慎重であるべきだというふうに思っています。

岩屋毅 前外務大臣:
私はむしろ本当に効果的な短期でできる給付をやって物価高対策にするというのが正しい方向性なのではないかなと思っています。別に選挙のときに言ったからといって、「検討する」ということは言って確かに検討してきたわけですから、ここは間違いのない誤りのない判断をしていくべきときではないかなと思いますけどね。

ーー高市総理は「成長のスイッチを押して押して押しまくる」と述べたり、いわば大きな部分での日本の経済の成長というのにすごい関心があるが、結局のところ私達の暮らしの部分についてはどうなんだろうと思ってしまいますが。

岩屋毅 前外務大臣:
家の中でもスイッチをどんどんどんどん押しまくっていくと、もう電力の供給が間に合わなくなってブレーカーが落ちちゃったりするわけですね。だからその意味で、財政は極めて厳しい状況にあるということを前提においてメリハリをつけていく。取捨選択をしていく。そういう運営が大切なんじゃないかなと思いますね。