食品工場では、毎日大量の野菜くずつまり、生ごみが発生します。静岡県吉田町の惣菜メーカーの工場では、生ごみを再利用して質のいい野菜を生み出す最先端のお惣菜作り実践されています。目指すのは農業のあり方の大転換です。
<和田啓記者>
「みずみずしくてとっても濃い味がします。このおいしさの裏にはSDGsの取り組みが隠されているといいます」
静岡県吉田町の食品工場が所有する畑です。きれいな色つやのキュウリなどが年間を通して育てられ、工場でお惣菜になります。
「もう一品ほしいな」のフレーズで、静岡県内ではおなじみのCMを展開する食品メーカー「ヤマザキ」。チルド惣菜を手掛けるこの企業は、キュウリだけでなく、ゴボウやサトイモなど多くの野菜を生産、加工しています。
<ヤマザキ マーケット戦略課 大田渚彩さん>
「こちらがカボチャが保管されている冷蔵庫になります」
Q.ココ冷蔵庫なんですね、すごい量の野菜ですね
「本当にたくさんのカボチャが置かれています」
Q.どれくらいで使いきる量ですか?
「だいたい2週間で使い切るくらい」
Q.この部屋のカボチャを2週間で使い切ってしまう?
「そうです」
全国に商品を展開する「ヤマザキ」、大量の野菜を使います。お惣菜になる過程で必ず出るのが、野菜くずなどの「食品残さ」です。静岡県内の全工場で出る残さは1日36トン。ゾウにすると6頭分にあたる生ごみが毎日発生します。
<ヤマザキ 大田渚彩さん>
「処理に費用が掛かるのが一番大きな課題。水分が多いので、燃やすのに時間がかかってしまう」
大量の生ごみが出る工場では、年間数億円の費用がかかる上に、燃やしたり、埋めたりすることは環境に負荷をかけます。その解決に向けて取り組んでいるのが、生ごみの「再利用」です。
<ヤマザキ 大田渚彩さん>
Q.湯気が出ていますがこれは何でしょうか?
「微生物が食品残さを発酵させている真っ最中になります」
食品残さの発酵を促す微生物を独自の配合でブレンド。発酵により、80℃まで上昇した結果、水分は飛び、雑菌は繁殖しなくなります。そして、生ごみは良質な堆肥に生まれ変わるのです。
ヤマザキは、生ごみの7割以上を堆肥に変えることに成功。さらに、畜産農家とも連携して、家畜の糞もリサイクルし、それらをまた、次の野菜作りに生かしています。化学肥料に頼らない循環型のお惣菜作りです。
<ヤマザキ 大田渚彩さん>
「甘みやうまみ成分も高まっていることも実証されていますし、土づくりによって持続的・安定的・効率的に野菜を栽培できます」
持続性にこだわる背景には、農業を取り巻く問題があります。静岡県内の農家の数は、後継者不足などを背景にその数は減少の一途をたどり、10年前の6割にまで減ってしまいました。生産の安定性を求めたはずの化学肥料は、物価高や輸送費の上昇により高騰し、追い打ちをかけます。
一方、生ごみから生まれた良質な堆肥は野菜の成長を促すだけでなく、近年多発する自然災害にも強さを発揮します。台風が通過した後の水田を映した写真を見ると、一般的な手法で育った稲は台風の影響で倒れました。一方で、生ごみの堆肥で育った稲は、しっかりと立っています。質のいい堆肥は、土の粒同士の結びつきを強める効果があり、自然災害から農作物を守るのにも役立ちます。
「ヤマザキ」がつくる堆肥には安定した生産を確保し、農業をもっと続けやすいものに変えたいという願いが込められています。
<ヤマザキ 大田渚彩さん>
「ゆくゆくは安定的で持続的な農業を構築して、化学肥料に頼っている日本の農業の在り方を変えていければと思っています」
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