蒸し上がりの湯気とともに甘い香りが広がり、つやつやと黄金色に輝く「小石饅頭」。皮のもっちりとした食感と、上品な白あんのハーモニーが後を引く、長岡家の看板商品です。

「昔、石蹴り遊びで遊んだ童心の心を思い出すような懐かしい味ということでネーミングしました」と語るのは、3代目の長岡光広さん。

妻の圭子さんと二人三脚で、JR会津坂下駅から車で5分ほどの場所にある店を営んでいます。

生地にはみそとしょうゆを使い、甘じょっぱい味わいに。その味を引き立たせるため、あえて白あんを使用しています。白あんは、「非常になめらかで、雑味のない味」に仕上がっています。

「味が変わったって言われるのが一番つらいので、祖父と父の味を落とさないように努力してます」と光広さん。その言葉からは、伝統の味を守り続ける強い意志が伝わってきます。

故郷・浪江町への思いと会津での再出発

長岡家の創業は昭和3年。看板商品の小石饅頭は昭和30年代から作られ、多くの人に親しまれてきました。しかし、その歴史が紡がれたのは会津坂下町ではありませんでした。

もともと店は浪江町にありましたが、震災で避難を余儀なくされ、店は取り壊されました。今は看板だけが残されています。店内に飾られた模型は、光広さんが「残しておきたいなという気持ちで作りました」という、浪江町にあった頃の店と工場を再現したものです。

「お店の思い出もあるんですけど、2階が住まいだったので、子どもたちの小さい記憶が楽しかったなっていうのが」と、圭子さんは懐かしそうに語ります。

震災後、避難先を転々としていた長岡さん夫妻。ある製菓会社に声をかけられたことをきっかけに会津坂下町へ移り、震災から3年後の2014年に「長岡家」を再スタートさせました。

「もう不安しかなかったですけど、出してみたら双葉郡のときのお客さんも来てくれたし、地元の方も結構声かけてくれて、大変やりやすい10年間でしたね」と光広さんは振り返ります。

圭子さんも、「会津の方に『頑張ってね』とか『応援してるよ』とか、温かい言葉をたくさんいただいたので、ここで正解だったんだなって思ってやってます」と笑顔を見せます。

地域に愛され、故郷を思い出させる味に

この12年間で、長岡家は会津坂下町の土地でもすっかり親しまれる存在になりました。近所から来たというお客さんは、「やっぱり小石饅頭かな。中のクリームと、あと皮がね、すごくこうもっちりしてておいしいですよね」と話します。

この日、店には浪江町出身で、現在は栃木県に避難しているというお客さんも訪れました。会津に来たタイミングで立ち寄ったといい、小石饅頭を食べるのは震災以来15年ぶりだそうです。

一口食べると、「うん、変わらないね。安心しました」と語りました。「ほんと苦労したと思います」。その味は、懐かしい浪江町を思い出させてくれるのかもしれません。

季節の味を届け、会津の地で100年続く店へ

長岡家では、定番の味に加え、四季を感じられる和菓子も大切にしています。これからの時期におすすめなのが、6月から販売を開始した夏季限定の「水饅頭」です。

葛と寒天を使った涼しげな一品で、あんは2種類。お店で炊く自家製あんを使った「こしあん」と、ゆずの皮とレモン果汁を混ぜた、香りと酸味が暑い日にぴったりの「ゆずレモンあん」です。

「つるっといける水饅頭なので、暑くなったらぜひ食べてほしいです」と圭子さん。

光広さんは、「できればね、創業した土地に帰ってやりたい気もあるんですけど、せっかく会津坂下に出したので、地元の方にたくさん来ていただけるようにおいしいものを作っていきたいですね」と語ります。

浪江町で創業してから98年。3代目の目標は、この会津坂下町でこれから100年続くお店にしていくことです。故郷への思いを胸に、第二のふるさとで伝統の味を守り、新たな歴史を刻み続けています。

【店舗情報】
四季菓匠 長岡家
住所:福島県会津坂下町
営業時間:午前9時~午後6時
定休日:火曜日

『ステップ』 
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2026年6月4日放送回より)