2022年は日米の金融政策の差から32年ぶりの円安となった為替市場。24年ぶりの為替介入や年末には日銀の事実上の利上げでやや落ち着きを見せたが、今年はどんな相場になるのか。予想するのはバルタリサーチの花生浩介氏、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏、三井住友信託銀行の瀬良礼子氏、バンク・オブ・アメリカの山田修輔氏の4人のアナリストだ。為替のプロたちが今年のドル円相場の行方を占う。
■2023年のドル円相場を大胆予想

2022年は為替が大きく動いた年になった。まず22年のドル円相場を見ておく。年始は115円32銭でスタートし、最も円高になったのは1月の113円。そこからアメリカの金融引き締めがあり、151円96銭まで円安が進んだ。その後、揺り戻しがあり、131円11銭で年末を迎えた。アナリストの年末予想は見事に全員大ハズレだった。
――一番近かったのが、山田氏の118円だった。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
2022年は2つのサプライズがあって、ひとつはコロナ禍で財政拡大と供給制約があり、そのインフレへの影響を市場が過小評価したという点と、ウクライナ戦争によるエネルギー価格の高騰です。円にとっては金利差拡大と貿易赤字拡大でダブルパンチとなったので、円の価値が根本的に問われる1年だったと思います。

――一番円高を予想していたのが伝統的円高派の瀬良氏の108円だった。
三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
2022年は国際秩序の大転換の年として後世記録されるような年になるのではないかと考えています。この30年間、ディスインフレ(低インフレ)の中で経済は動いてきましたが、この転換を読めなかったということで反省しています。

今年の予想は、120円ぐらいから140円台ぐらいの間で動くだろうという意味では共通している。
――花生氏は円高派で年末は120円で着地すると。高すぎないか。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
足元では円高が行き過ぎだと思っていて、3月にかけて少しドル高方向に揺れ戻しがあると思っています。それはFRB(米連邦準備制度理事会)の金利高止め政策と市場の金利低下期待のギャップが大きすぎるので、それを修正する形でこれから3か月ぐらいは少しドル高の方に戻ると思います。ただ最終的にはアメリカのインフレが落ち着きを見せて、年末にかけてドル円のマーケットを押し下げていくという形を考えています。
――円高派と言われる瀬良氏は127円。140円まで円安が進む時期があるだろうとしている。
三井住友信託銀行 瀬良礼子氏:
アメリカの利上げが続いていく中で、円安方向に振れやすい。年末になると利上げがもう止まったという形で、円高に進みやすいという動きになってくると。重要なのは、アメリカ経済がここから悪くなっていくので、雇用を守るという姿勢にいつシフトチェンジするのかが今年の注目材料になってくるのかなと。
――植野氏は130円で終わるという予想だ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏:
今年の春ぐらいまではアメリカもまだ利上げを続けますし、その過程では1回140円ぐらいまで戻っても不思議はないなと。ただ今春でアメリカの政策金利が5%ぐらいで打ち止めになって、その後すぐに下げなくてもマーケットは利下げ期待を織り込んでいくと思います。そうするとドルの値段は下がっていくと思います。
――一番円安を予想したのが山田氏で135円。
バンク・オブ・アメリカ 山田修輔氏:
アメリカの消費者はコロナ禍の過剰貯蓄の影響で消費の余力がありますし、労働市場は非常に強い。利上げが米国経済を冷やすまで結構時間がかかると思います。下手に利下げに入ると逆にまたインフレがぶり返してくるリスクがあると思うので、米国としては金利を高い水準でヘッジしなければいけない。一方で円は12月に実質日銀が利上げしましたが、利上げサイクルに入れるかどうかはまた別の問題で、日本はかなり財政が悪化していますので、日銀の利上げ、政策正常化と長期的な財政の改善政策をセットにする必要があると思います。