再審=裁判のやり直しを請求中の元死刑囚の死刑を執行したことは、弁護権の侵害で違法だなどとして、元死刑囚の弁護人らが国に賠償を求めている裁判の控訴審。

大阪高裁は5月13日、弁護人らの控訴を棄却しました。


■2人殺害の強盗殺人などの罪で死刑が確定 4回目の再審請求中に死刑執行

岡本啓三元死刑囚は、1988年に共犯者らと共謀し、男性2人を殺害し多額の現金を奪った上、遺体をコンクリート詰めにして造成中のゴルフ場に遺棄したなどとして、強盗殺人や死体遺棄などの罪に問われ、2004年に死刑が確定しました。

岡本元死刑囚は2008年に1回目の再審請求を行いましたが、棄却が確定。その後、2011年と2015年に岡本元死刑囚の弁護人が再審請求を行ったものの、これらも棄却が確定しました。

そして、2017年に弁護人が4回目の再審請求に踏み切りましたが、審理中の2018年12月27日、大阪拘置所で岡本元死刑囚の死刑が執行されました。


■争点となったのは“殺意発生のタイミング”

死刑が確定した刑事裁判や、4回にわたる再審請求審で、岡本元死刑囚側は一貫して、「成立するのは強盗殺人罪ではなく、殺人と強盗の併合罪だ」と主張していました。

つまり「殺意が発生したのは現金を強奪した後で、強盗殺人罪は成立せず、量刑が変わってくる」という旨の主張です。


■「弁護権を侵害」賠償を求め国を提訴

岡本元死刑囚の弁護人3人は、「死刑執行により、再審請求での立証が困難を極めることになった。弁護権を直接侵害され、誤った判決をただし、死刑確定者の命を救うという責務の遂行が不可能になった。国際人権規約にも違反している」として、計1650万円の賠償を求め、2020年12月に大阪地裁に提訴しました。


■国側「刑訴法の規定では、再審請求に執行停止の効力ない」

一方の国側は、「刑事訴訟法の規定に照らせば、再審請求に死刑の執行を停止させる効力はない。再審請求中に刑の執行を停止できる裁量権が検察官には認められているが、岡本元死刑囚について死刑執行を停止すべき事由は見あたらなかった」として、請求の棄却を求めました。


■「再審請求により当然に死刑執行が停止されるとすれば、請求が不断に繰り返されることで執行が永続的に不可能に」1審は請求を退ける

大阪地裁(大森直哉裁判長)は去年5月の判決で、「内容や回数などに関わらず、再審請求によって当然に死刑執行が停止されるとすれば、再審請求が不断に繰り返されることによって、執行が事実上永続的に不可能となる。死刑制度の存置を前提とする限り、現行の法制度の下でそうした事態が生じることは不合理」と指摘。

「再審請求中の死刑執行者に一律に死刑を執行してはならないという、職務上の義務を導くことは困難」として、弁護人らの請求を棄却する判決を言い渡しました。


■1審判決では「人の生命を奪う究極の刑罰である以上、再審請求中の死刑確定者への死刑執行は慎重な検討を要する」との付言も

一方で大阪地裁判決では、「死刑が人の生命を奪う不可逆的かつ究極の刑罰である以上、再審請求中の死刑確定者への死刑執行については慎重な検討を要するというべき。今回の判決によって、再審請求中の死刑確定者への死刑執行が違法と評価される場合があり得ることまでは否定されない」という付言もありました。

そして弁護人らは、地裁判決を不服として控訴していました。