ABAに頼らない 従来とは異なる適応の仕組み

注目すべきは、WS1が植物ホルモンであるABAに対する応答が特別に強いわけではない点です。

従来知られている仕組みとは異なる方法で乾燥に適応していることがわかりました。

詳しく調べたところ、WS1では以下の三つの変化が確認されました。

  • アミノ酸の一種であるプロリンが多く蓄積していること

  • 炭素や窒素の使い方(代謝)が変化していること

  • タンパク質の働きを調節するリン酸化パターンに大きな変化があること

プロリンはアミノ酸の一つであり、ABAと同様に環境ストレスに応答して合成され、植物体内の浸透圧調節を行う適合溶質の一つです。

近年では、ストレス応答時のシグナル分子としても機能しているとの報告があります。

また、リン酸化とは、ATPからリン酸基をセリン・スレオニン・チロシンなどのアミノ酸側鎖へ転移させ、タンパク質の構造と機能を瞬時に変化させる可逆的な翻訳後修飾です。

植物では乾燥・塩・光などの環境ストレス応答に関わり、急速な適応応答を実現する機構として知られています。