ある真心が戦禍の英雄のメダルを守り、子どもたちの笑顔と貴重な思い出を作った――。東京で桜の満開が宣言されてから約1週間。4月の最初の日曜日に、都内港区にある伝統派空手の皆思道場は午前中から沸き返っていた。

2021年東京オリンピックで初採用された空手の男子組手75㎏級で銅メダルを獲得したウクライナのスタニスラフ・ホルナ氏(37)が、ロシアの侵略を受ける母国を支援するためにチャリティーオークションに出したメダルを、本人に返還することになったからだ。2万500ドル(約260万円)で落札したのは、この道場に通う子どもの親御さんの一人だとい
う。

午後の返還式。道場に到着して母国の空手着に着替えたホルナ氏は、子どもたちの代表からメダルを首に掛けられると、「このメダルは僕の夢だった。この援助を一生忘れることはない。国と国の支援はあるが、このメダルは人と人とのつながり、助け合いを証明してくれた」と心から感謝の言葉を述べた。その直前、ホルナ氏は立って整列する子どもたちの前で正座し、両手をついて深々と礼をした。