“物語”の豊かさと危うさ 朝井リョウさんが問いかけることは

小川キャスター:
朝井さんは小説を書くときに、因果関係が複雑なものを複雑なまま描くということを意識しているということです。

お話を聞いていると、簡略化したり断定したりすることなく、一つ一つ丁寧に言葉を積み重ねていく姿が印象的でした。

“物語”が一方的に意味を持って暴走していくという、危うさを感じているからこそなのかなと感じました。

藤森祥平キャスター:
“物語”と自分の境界線は曖昧になってしまって、冷静じゃない自分がいるような気がします。

小川キャスター:
「イン・ザ・メガチャーチ」は“推し活”が入口ではありますが、“推し活”の物語ではなくて、日常の色々なところに散りばめられていると思います。

例えば、選挙やSNSでの言論の争いなど、何を信じればいいかわからないという時代の中で、自分の外側に望みを託し、救いを求めるということが自然になっていると思います。

ただ、それがいつの間にか人を縛ったり、飲み込んでしまう危うさを孕んでいる、境界線がどこにあるのかということを朝井さんは問いかけているのかなと感じました。

“物語”に誘われる豊かさと、絡め取られる危うさの境界線に私達が向き合えるかどうかで、この作品が10年後、薬草になるか毒草になるのか分かれてくるのかなと思います。

取材:横山菜穂、牧野風香
編集:小川友広
カメラ:酒井克直、春田晃季
VE:宇佐美裕大、早川大貴、吉井里々子