石川県羽咋市から志賀町の海岸に、本州では唯一、この地でしか見られない「奇跡の昆虫」がいます。その名はイカリモンハンミョウ。絶滅の危機に瀕しながら、地道な保護活動もあり、個体数がV時回復しています。

本州で唯一、能登の海岸に生息するイカリモンハンミョウ(石川県ふれあい昆虫館提供)

能登の海岸で命をつないできたイカリモンハンミョウですが、2010年ごろには個体数が200匹程度に激減し、絶滅の危機が高まりました。減少の背景には、砂浜への車の乗り入れ増加や、海岸の工事に伴う生息環境の悪化、砂浜が狭くなっていたことがあります。内灘町では2018年に「町内では見られなくなった」という理由で「町天然記念物」の指定を解除するという事態も起きました 。

絶滅への危機感が高まる中、2012年から官民一体となった保護活動が本格化します 。生息地の海岸に車の乗り入れ規制するため、地元の協力を得て車止めの柵を設置しました。また、海岸清掃では、発泡スチロールやペットボトルといったプラスチックゴミは拾い、漂着した海藻はそのまま残すよう気を配りました。イカリモンハンミョウの幼虫、成虫は甲殻類の仲間であるヒメハマトビムシを主食にしており、打ち上げられる海藻にヒメハマトビムシがくっついているからです。推定の個体数は2023年に5万4000匹と、5万匹を超えるまでになりました。

もっとも、個体数が増えた正確な理由は分からないそうです。上田会長は「オニハマダイコンという外来植物が幼虫の生息場所に繁茂し、根元に砂をため込んで乾燥化をもたらす可能性があるので、その除去を皆さんと2、3年やりました。その効果があったのかも知れません」と推測しますが、確証はないそうです。

「必死に探して数匹」から「足元に数十匹うごめく状態」

イカリモンハンミョウは成虫になるまで2~3年かかります。成虫は6月中旬から下旬に砂浜に現れ、8月上旬ごろまでよく見られます。

福富さん「2010年ごろは必死に探して数匹見つかるかどうかでした。それが今では波打ち際を見渡すと視界に数十匹、うごめくように走り回っています」

2024年の能登半島地震では津波が発生し、イカリモンハンミョウの生息地への影響が心配されました 。しかし、羽咋市から志賀町にかけての砂浜は大きな影響は受けず、地震の後も生息が確認されています 。

福富さん「イカリモンハンミョウがいなくなったとしても人間が困ることはないかもしれません。それでも、人間にとって必要な生き物しかいない世界って楽しくないですよね。よく分からない生き物がいて、新しい発見があるからこそ楽しい。地域の人たちがこの虫を誇りに思い、無理なく共生していける形を模索したいです」

上田会長「イカリモンハンミョウがなぜ本州では能登にしかいないのか、その理由を明らかにしていくことで、実はイカリモンハンミョウを守ることは単に虫を守ることではなく、能登の自然の歴史的変化の生き証人を守ることだと気づかされます。つまり、イカリモンハンミョウの生活の全貌を明らかにすることは、大げさではなく能登半島の総合的理解のために不可欠であり、それゆえ貴重であり、守る価値があると考えています」