政府は防衛費の倍増を決め、“敵基地攻撃”を“反撃能力”と言い換えて容認するなど、防衛政策の大転換に踏み切りました。日本各地では既に防衛力強化の現象が起きています。安全保障の最前線、現場からの報告です。
■安全保障最前線 配備が進む「12式地対艦ミサイル」

熊本県熊本市。戦車が県道を走り抜ける。“自衛隊通り”と名付けられた道路は毎年市民で溢れかえる。この中に今、最も注目される部隊が混じっていた。“地対艦ミサイル部隊”だ。

防衛省は最新鋭の12式地対艦ミサイルを“琉球の孤”と呼ばれる南西諸島に次々に配備している。
現在200キロの射程を1200キロ以上に改良、北朝鮮や中国の基地を想定して1000発を配備する。1発4億円の高額な兵器だ。敵の射程圏外から発射するいわゆる“スタンドオフ・ミサイル”が“反撃能力”の主力となる。

陸上自衛隊 市川文一 前武器学校長
「ジェット燃料をたくさん積んで、エンジンに改良を加えれば技術的には可能。相手が撃とうとしたら反撃するという事で、相手も日本に対する攻撃をためらう」
■巡航ミサイル・トマホークを潜水艦に搭載を検討
しかし、大量配備には時間がかかる。そこで俄に注目されているのが巡航ミサイル・トマホークだ。

1991年の湾岸戦争に初めて登場した兵器に世界は驚愕した。射程は約1500キロ、ピンポイントでの攻撃が可能だ。政府は500発の購入をアメリカに打診している。
防衛省は潜水艦にトマホークや長射程の地対艦ミサイルを搭載する事で、反撃能力を強化しようとしている。日本の潜水艦の能力は世界でもトップクラスと言われる。潮の流れや温度など条件が良ければ、1000キロ近く離れた場所の“音”も収集できる。

ソナー(音波探知機)担当者「音を聞いただけで、船の大きさ、種類、速力がわかる。(探知できる)距離は性能上の秘密だが、かなりとれる」

報道特集のカメラが初めて捉えた、潜水艦の魚雷発射装置。元艦長は潜水艦からのトマホーク発射は難しい事ではないと語る。

伊藤俊幸元艦長(防衛省元情報分析官)
「1セット買ってきて、装置を入れればできます。反撃能力として、1000キロ以上離れた敵基地に攻撃するものを持ってなかったから、そのひとつの選択肢としてトマホークを持つ」
潜水艦にトマホークを搭載すれば反撃能力は格段に高まる。
伊藤元艦長「日本がトマホークを持ったというだけで、一定の打撃力を持ったと認識する。(潜水艦がトマホークを保有すれば)どこから飛んでくるかわからない」
隠密性が高い潜水艦は活動範囲が広い。必要最小限の防衛力を定めた“専守防衛”を大きく逸脱する可能性がある。