地球温暖化などの影響により、水揚げの量や時期など目まぐるしく変化する海の環境への対応を迫られている水産業界。その中で、新しいチャレンジで立ち向かおうとする宮城県石巻市のある企業を取材しました。変化に立ち向かえる強みとは何なのでしょうか。

■水揚げ量は低調、苦慮する水産加工会社

石巻市の水産加工会社、布施商店。旬を迎えたマダラを次々とさばきます。売り上げの半分以上を占める主力商品です。

布施商店 布施太一社長:
「取引先は企業が多い。スーパーのバックヤードに納品して、スーパーで切り身にして消費者に食べてもらう形が多い」

ふっくらとした白子。石巻市のふるさと納税の返礼品に採用され、「マダラの白子鍋セット」として全国に発送していますが、この日、加工したマダラは、北海道や岩手県から取り寄せたもの。

地元、石巻での水揚げが少ないため、他の産地から仕入れているのです。

布施商店 布施太一社長:
「地元で仕入れをすれば、一番鮮度が高い状態で加工もできるし、運賃もかからない状態で仕入れが出来る」


石巻市の魚市場の過去40年間の水揚げ量を5年ごとにまとめました。最も多かった1987年は、▼40万トン以上ありました。しかし、1997年に▼23万6000トンを記録して以降、20万トンを上回ることはなくなりました。東日本大震災の後は、最も多かった2017年でも、▼11万2000トンにとどまります。今年は、去年とほぼ同じ、▼10万トン程度のペースで推移、水揚げ量は低調です。

石巻魚市場 佐々木茂樹社長:
「国の施策で資源管理が徹底しているので、「大漁貧乏」はもうなくなった。年々漁獲量は減る傾向にあるが、魚価は高めに推移しているので、買受人にとっては大変苦しいやり繰りが必要」


秋の味覚、サンマ。女川町での今シーズンの水揚げは、過去2番目に少ない▼1294トンにとどまりました。最も少なかった去年をわずかに上回ったものの、▼1万5000トン以上を記録した4年前の10分の1以下です。

はるか沖合いの公海を中心とした漁となったうえ、シーズンを通して群れがまとまらず、水揚げ回数の減少につながりました。

布施商店が扱うマダラも例外ではありません。石巻魚市場での今年の水揚げ量はおよそ▼1800トン。この10年で最も多かった2014年の4分の1です。

かつては、10月ごろから水揚げが本格化していましたが、海水温の上昇によるものか、近年、ピークは、年明けにずれ込んでいます。