子どもの成長や家の繁栄を願う大きなたこです。山口県萩市の沖合45キロに浮かぶ離島・見島で、古くから伝わる伝統の大きなたこ”おにようず”が10年ぶりに作られました。(2025年12月16日取材)

畳6枚分の大きさがあります。棟梁はおにようず作りの名人、長富治人さん(65)です。親戚や知人ら30人が集まり、一緒に作りました。

見島では長男が生まれたときに、子どもの健やかな成長や代々続く家の繁栄を願いおにようずが作られます。今年、長富さんの長男に待望の男の子が生まれました。

大阪に住んでいますが、悪天候で定期船が欠航するなどしたため帰省は見送ったそうです。それでも、島を挙げてのお祝いです。

長富治人さん
「長富家のために、いろんな、尽力つくしてくれるのが一番ありがたいです。地域の絆とか、そういうことにつながっていくんで」
親戚
「少子高齢化で子どもがいないんですよね。珍しいし、だからたくさん祝いもいただいているんです」

地元の保育園児3人もお手伝いです。ひげの部分を黒く塗っていきました。

園児
「おにようずに描いた」

その間、長富さんは真剣な表情でおにようずの顔を描いていきます。

長富さん
「僕らも手が震えますよ、最初、一筆入れるときは。やりだせばそうでもないけど、その家その家の思いが入っているんで」

女性たちは祝いの席の準備に余念がありません。

”ぼたもち”と”ぜんざい”は欠かせないそうです。お昼を迎えると酒を酌み交わし、料理を食べ、和気あいあいと過ごします。

長富さんは6年前に妻を亡くし、今は1人暮らしということです。

長富さんの妻の姉
「こうやって、みんな親戚が集まって、お祝いしてくれて本当にうれしいです」
長富さん
「跡取りが家に残らないというところが多いので、こういうことしたくてもできないっていう人がたくさんいるなかで、昔ながらにできるというのは幸せを感じますよね」

おにようずは無事に完成し、正月に揚げる予定だそうです。