福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える『老舗物語』。会津若松市に一度途絶えた伝統工芸品を復活させ時代に合った作品作りをしている窯元があります。地元の温泉宿とコラボし、新たな取り組みを行っています。

深みのある濃紺や繊細で淡い紫の艶やかな陶器。こちらは会津慶山焼です。その歴史は古く、400年以上にのぼります。

飯盛山から車で5分ほどのところにある窯元「会津慶山焼 やま陶」で、その伝統を守り続けるのが、曲山輝一さんです。

--曲山輝一さん「(会津慶山焼は)お城の屋根瓦焼くために、焼き物を始めたのが起源。技術指導で他の土地から専門の方が来て、この土地で粘土がとれたので、この場所で作り始めた。」

文禄元年、会津藩主・蒲生氏郷が鶴ヶ城の前身である、黒川城に屋根瓦を葺く際、肥前国の唐津から陶工を招いたのが始まりとされる会津慶山焼。

その特徴が…

--曲山さん「伝統的に守っているのがこの色。あとこちらの紫。昔ながらのもみ殻だったり、けやきの木を燃やした灰で調合した釉薬で、この色をずっと出しているのが特徴です。」

土はもちろん、釉薬も昔ながらの製法で力強い色や優しい色など、こだわりの作品作りを行っています。

--曲山さん「その時代の人が使いやすい、好んで使ってもらえるそういう器を目指して、変化させながらやってます。」

その中でも特徴的なものが…。

--曲山さん「こちらの桜色が、釉薬を吹き付けながらつける技法で出した色になります。」

通常は塗ったり、浸すことが多い釉薬をこのように強弱をつけながら吹き付けることで、色にグラデーションができたりあえて色むらをつくることで個性的なデザインになるんだそうです。まるで桜の花びらが舞っているかのような色合い。

伝統を守りつつも、技法や形・デザインなどその時代に合った器作りを続ける会津慶山焼。実は一度途絶えたことがありました。

--曲山さん「太平洋戦争後に一度慶山焼は無くなっています。職人が徴兵されたり、戦後不況で器の需要がなくなってしまったので。この地区にも窯元があって、これだけ素晴らしい器があったんだよというのをいろいろな方に教えてもらって。」

慶山焼について実物を見せてもらったり、古い文献を読み解き曲山さんの父親が51年前に復活させました。

復活した慶山焼ですが、いま抱える問題も…。

--曲山さん「欠かせないのが一緒に働いてくれる人間、担い手不足が深刻な問題になっておりまして、若い感性も取り入れながら時代に合わせて作っていきたい。」

そこで若い人にも興味を持ってもらおうと、ある温泉宿とコラボした面白い試みを…。

--曲山さん「取り扱いの中で欠損させてしまったり、焼いた時にちょっと歪んでしまったり、こういうものはお店に並べられずに大体は捨ててしまう。」

年間100キロ以上も廃棄がでるそうで、そこに新たな命を吹き込む試みは、慶山焼からもすぐ近くにある東山温泉「御宿東鳳」とのコラボでした。

ロビーの一角に案内され…

--曲山さん「こちらになります。焼き物に新しい質感を加えてもらって、もう一回命を吹き込まれた感じになってます。」

廃棄になる慶山焼を使い、別のアーティストが手を施し新たな作品へと生まれ変わりました。

--戌爪さん(御宿東鳳)「こちらは『もけもけ』というアーティスト、チームになるんですけど上質な違和感というものに着目しておりまして、モフモフとした面白い印象のあるものですので、伝統工芸品というと固いイメージがあるんですが、柔らかい素材が組み合わさって、とてもかわいいものに仕上がったと思っております。」

陶器と全く異なる素材とを組み合わせた作品。ロビーに展示され、訪れる観光客の目を引いているそうです。

--戌爪さん(御宿東鳳)「お客さまに見てもらって、慶山焼のお店に足を運んでもらったり会津より好きになってもらえるような。」

--曲山さん「新しい世界があるというのを知るだけでも、今後私たちの作陶に大きく影響が出てくると思います。」

『ステップ』 
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年12月11日放送回より)