ブランドイチゴ「かおり野」。極早生品種で11月ごろに出荷が出来ますが、さらに出荷を早めようと2024年、九州電力がオール電化による促成栽培を始めました。
開始から約1年、スマート農業の現状は。
オール電化で栽培 9月末から食べ頃に

福岡県朝倉市の九州電力が運営する「上寺いちご園」です。

2024年10月に訪れた時には、一般的なイチゴより2か月ほども早く、食べ頃となっていました。

その名も「超促成栽培」。カギとなっているのはオール電化の栽培設備です。

電動式ポンプを使って汲み上げた地下水を実が付く温度まで自動で調節し、株の根元に流すことで、夏場でも暑さに弱いイチゴを成長させることが出来るのです。
本格的な販売開始から1年あまり2025年の出来具合は?

RKB 本田奈也花アナウンサー
「上寺いちご園のハウスに1年ぶりに来ました。きょうも冷え込んでいるんですが1年経ってどうなっているのでしょうか…。ハウスの中は全然違う。温かいですね。そしてイチゴが真っ赤に熟しています」

上寺いちご園 栽培責任者 田川直さん
「品質的には問題ないんですけど、ちょっと甘さがですね、昨年に比べたら、ちょっと控えめになっております。その理由としましては、やはり夏場の温度の状況というか、そういったところが大きく影響してるかなと思ってます」
2025年は想定以上の猛暑が長引いた影響で寒暖差をつくることに苦労したと言います。そんな中でも、電力で最大限生産管理したことで・・・

本田奈也花アナ
「甘い!みずみずしい」

「かおり野」特有の風味、甘味だけでなく、最大の武器である早期出荷に関しても、2024年とほぼ変わらない9月末ごろを維持。
すでに2回目の収穫が終わっていました。

本田奈也花アナ
「福岡市西区の青果店です。イチゴ、ありました!1620円で販売されています」
こちらの青果店では出荷直後の9月末から上寺いちご園のイチゴを販売しています。

当初は、1パック、3000円ほどしていたというイチゴは現在、1620円。
かなり高めの設定ですが、売れ行きは上々だそうです。

やおや植木商店 植木宏徳 会長
「売り上げは安定しています。ファンが多いんですよ。要はお客さんが買っていただくのならばお客さんにとって適正価格」

他にもデパートなど狙い通りに販路を獲得しているという超促成栽培イチゴ。
一方で、失敗もありました。
「かおり野」の他に、福岡県久留米市で誕生した「恋みのり」も2024年、栽培していましたが、想定よりも実がなりませんでした。
上寺いちご園 田川直さん
「今年はこの超促成栽培にマッチするような品種を探しておりまして、そういったところは試験的に栽培しています」

これまで、10種類以上の品種を試したものの、安定的に出荷できたのは「かおり野」のみだということです。
また、人件費や光熱費の高騰も、生産現場に重くのしかかっています。
そんな中、コストを抑えるために、2025年、新たに導入したのがAIによるデータ解析です。

上寺いちご園 田川直さん
「AI技術を活用してイチゴを摘み取る時期を予測したり、粘着シートについている害虫を画像認識で増加状況を把握することで農薬の散布の軽減を行っている」

約1.5ミリの小さな害虫を人の目で確認する必要があり、発見が遅れた場合には複数回、農薬を散布するなど費用がかかります。

そこで、このイチゴ園では、AIを使って害虫がどのくらい付着しているのかを分析し、農薬をまく時期や量を調整。
正確に害虫対策が行えるとして、現在、他のイチゴ農家からも問い合わせや視察が増えているそうです。

上寺いちご園 田川直さん
「農業というのはやはり経験と勘で行ってきたところが強いかと思いますが、(AIで)非常に効率的に計画もできておりますし、人員の削減に繋がっているかと思っております」

オール電化イチゴの挑戦はまだまだ始まったばかり、最高のイチゴを食卓に届けるため、試行錯誤は続きます。














