電子マネーをめぐる詐欺事件で、犯行グループのマネー・ロンダリングに関与したとして、組織犯罪処罰法違反の罪に問われていた会社社長の男(43)に、大阪地裁は懲役3年の実刑判決を言い渡しました。
従業員の男性(37)も、共犯関係にあったとして同罪で起訴されていましたが、大阪地裁は「犯罪収益であるという認識があったとは認められない」として無罪を言い渡しました。
判決によると、今西利行被告(43)は2021年~2023年、氏名不詳者らが90人あまりからだまし取った「アップルギフトカード」や「ビットキャッシュ」の利用権・約5850万円分について、自らの会社の正当な業務で取得したように装い、他者が運営する売買仲介サイトに出品して売却したり、別の業者に売却したりしました。
今西被告の会社は当時、電子マネーの買い取りサイトを運営していましたが、取引金額の大きい“大口の顧客”については、会社近くの路上や駅の階段などで、本人確認もせず、領収書も交わさない形で、その場に来た人物に買い取り金を現金で手渡していたということです。そのうえで、架空の領収書などを発行して会計事務所に提出し、会社の会計帳簿を整えていました。
今西被告は公判で、「犯罪収益だという認識がなく、そうした収益の取得や処分について仮装する意図や、詐欺グループとの共謀もなかった」として、無罪を主張。
一方で検察側は「組織的で職業的な大規模マネー・ロンダリングであって、計画的で巧妙悪質。被害金の行方は不明で、さらなる同種犯罪への再投資などに用いられたおそれは極めて高い」などと糾弾していました。
大阪地裁(山田裕文裁判長)は11月4日の判決で、「遅くとも2021年9月以降、買い取った電子マネーについて、各地の警察署から犯罪捜査のための照会がされ、被告はこれに回答していた。取引形態からして不審なものについて、詐欺被害に関連する犯罪収益であることが念頭に浮かばないなどということはありえない」と今西被告の主張を一蹴。
“被告が運営していたのは、いわばマイナーな電子マネー買取サイトだったが、“大口の顧客”との取引における買取率(定価に対する買い取り額の割合)が、メジャーな買い取りサイトに匹敵するほど高い”点なども指摘し、「経済合理性を欠く不自然な取引だ」と断じました。
そのうえで、「詐欺グループの者と連絡を取り合い、借名取引であることを知らなかったという体で電子マネーを買い取って、転売して現金化することで、マネー・ロンダリングを手助けし、そうしたリスクに見合う転売差額相当の利益を得ていた。マネー・ロンダリングに会社を利用させる対価として、相当の収益をあげていたと認められ、同種事案の中でも相当に悪質」と結論づけ、今西被告に懲役3年・罰金200万円の実刑を言い渡しました。
また会社に対しても罰金200万円をいい渡したほか、今西被告と会社から連帯して、約5850万円を追徴するとしました。
一方でこの事件では、従業員として“現金の手渡し”などを担った男性(37)も、共犯関係にあったとして、同じ組織犯罪処罰法違反の罪で起訴されていました。
大阪地裁は同日の判決でこの男性について、「電子マネー買い取り業務の全体構造を把握するほどの立場にあったことを裏づける証拠は見当たらない」「持ち運びに危険を伴う現金での支払いを不自然と感じても不思議ではないと言えるが、それだけで、従業員として指示されるままに業務をこなすにすぎない者が、犯罪収益の仮装などに自らが関与しているという思いに至るのが、通常とまでは言えない」などと指摘。
「買い取った電子マネーが犯罪収益であることへの未必的な認識があったとは認められない」と結論づけ、男性に無罪を言い渡しました。
電子マネー詐欺の犯行グループの「マネー・ロンダリング」に関与した会社社長に懲役3年の実刑判決 大阪地裁 従業員の男性は無罪「犯罪収益であることへの未必的な認識があったとは認められない」














