11月5日は「津波防災の日」です。東日本大震災や想定される南海トラフ地震を受けて高まる津波対策。今回の「わたしの防災」は津波を観測する現場の最前線に焦点を当てます。

11月1日、静岡県焼津市内で開かれた子ども向けの職業体験イベントです。

<橋本組の担当者>
「代表的なもので言うと、4本の足がついたピラミッドみたいな形をした消波ブロックと言います。皆さんの暮らしの安全を守るために、消波ブロックはすごい重要な役割をしてくれています」

焼津市の建設会社が海洋土木工事の現場を知ってもらおうと、「消波ブロック」と呼ばれる重さ数トンから数十トンに及ぶコンクリート製の構造物を使った実験が行われました。消波ブロックは沿岸部に設置されています。

<橋本組 杉山陸さん>
「役割は波の威力を弱めるというところ。波を消す効果がこれだけ発揮できるのを子どもたちに知ってもらいたい」

消波ブロックがない場合、波は防波堤を越えて陸側が水浸しになりました。一方、防波堤の海側に消波ブロックを設置すると、波は打ち消され、陸側には水しぶきが入る程度です。

<体験した子ども>
「ブロックがあるとすごい波が弱まるから、街を守ってくれるんだなと思った」

「いつ起きてもおかしくない」と言われている南海トラフ巨大地震。静岡県内でも津波の被害が懸念されています。

2025年3月に内閣府が公表した新たな被害想定では、全国の死者数は29万8千人で、静岡県の死者数は全国最多の10万3千人、このうち津波による死者が8万9千人に上るとされます。

津波の到達をとらえる国や研究機関の観測所は現在、静岡市の清水港を含め県内9か所に設置されていますが、「観測網」をさらに拡大させることが求められています。

<鈴木文之記者>
「静岡市の清水港です。津波観測の実証実験を、GPSを使って行っています」

50センチ四方の箱型装置は、津波が発生した場合、標高と緯度・経度を秒間隔、ミリ単位で観測できる「GPS波浪計」を搭載していて、観測データはウェブ上で確認できます。

GPS装置を開発した常葉大学の阿部郁男教授です。

<常葉大学 阿部郁男教授>
「今、清水港検潮所(観測所)っていうのが出てまいりました。この清水港の検潮所ですね。三保半島の内側にあります。もうこの場所に津波が来てるっていうことは、いろんな地域に津波が到達してる可能性があります。埠頭の沖やもっと沖にGPSのブイ、もっと大きなGPSのブイを浮かべることによって、少しでも早く津波の到達が確認できると考えている」

阿部教授が開発したGPS波浪計は1基あたり10万円程度のローコストで導入が可能だということです。

<阿部教授>
「防災というのを考えると、(観測)データを取得するアプリが作れて、アプリで情報提供できる仕組みを作っていければと思う」

阿部教授はGPS波浪計で沿岸部にいる人に直接情報を届けることで、より早い避難行動につなげたいとしています。