近年、興行収入が世界一にもなった中国の映画市場。しかし今年は状況が一変、海外映画の上映本数はこの10年で最も少なくなる見込みです。中国映画市場で、何が起きているのでしょうか。
どこかノスタルジックな街並み。中国・上海にある映画の撮影施設です。
記者
「上海は中国映画発祥の地とも言われ、上海の古い町並みを再現したこちらの施設では歴史映画などが量産されています」
2020年から2年連続で興行収入が世界一となった中国の映画市場。ところが映画ファンの間では不満が渦巻いていました。
「映画が見たい!」
白紙運動とも呼ばれた厳しいコロナ規制に反発する動き。抗議する人たちからは「映画が見たい」という声もあがっていたのです。中国映画産業の統計データによると今年の上映本数は389本と去年より4割以上減少。各地で行われたロックダウンなど、いわゆるゼロコロナ政策が影響した形です。
特に深刻なのは海外の映画作品で、今年上映されたのはこれまでに56本。この10年で最も少なく、コロナ前の2019年と比べると半分以下。
上海市民からは、こんな不満が。
上海市民
「大好きな映画が全て上映されていない。何もかも!(アメリカの)マーベルの作品も上映されていない」
「(コロナ対策が)緩和しても見る気がしない。愛国映画が多すぎます」
日本で活動する中国人の映画ジャーナリストはコロナ以外の要因を指摘します。
映画ジャーナリスト 徐昊辰さん
「映画に対する検閲はより厳しくなっている。(10月の)共産党大会がとても重要なので、できるだけリスクを減らして10月になるとほぼ新作がない状態」
中国で上映される映画は全て当局による検閲を通過する必要がありますが、明確な基準はなく、その時々の政治方針に大きく左右されるといいます。
たとえば、先日亡くなった江沢民元国家主席。
文化人としても知られ1998年、アメリカ映画「タイタニック」に感動し、国内での上映を「後押し」。中国における大ヒットの火付け役となりました。
これに対し、愛国主義を強調する習近平指導部のもとで海外映画への風当たりは強まる一方。
ただ公開できない映画は“裏”で流通していました。
海賊版を販売する業者
「今は中国とアメリカの関係がよくないから、アメリカ映画はほとんど上映されてない。昔はたくさん上映されてたけどね。今は減ってる。本当に少ない」
海賊版と呼ばれる違法なコピー商品のほか、ネット上にも不正にアップロードされています。
海外映画の減少が中国映画に影響することも懸念されています。
映画ジャーナリスト 徐昊辰さん
「映画は多文化のもので、お互い切磋琢磨して良い作品つくるのが重要。中国映画市場は中国映画だけで成立するものではない」
愛国主義を前に“世界一の映画市場”がその存在意義を問われています。
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