北海道電力泊原発3号機を再稼働するための理解は得られるのでしょうか。
北電は、31日午後、再稼働後の電気料金について家庭用で11%値下げすると発表しました。
◆家庭用は11%値下げ“再稼働後”の電気料金
・北電齋藤晋社長(31日午後3時半ごろ 北電本店・札幌市中央区)
「規制料金ではご家庭料金向けに、現在の料金と比較して11%程度の値下げ」
「全国一高い水準」といわれてきた道内の電気料金。北電は31日、泊原発3号機が再稼働したあとに、家庭向けの電気料金について「11%程度値下げ」すると発表しました。
早ければ、再来年=2027年にも値下げされることになります。

・道民
「1割くらい安くなっても高いのには変わりない」
「再稼働には賛成」
電気料金の値下げで暮らしはどうなるのか、そして、原子力エネルギーをめぐる政策のゆくえは…もうひとホリします。
北電が、31日示した試算では、家庭向けで11%程度、平均的なモデルで1か月で1000円程度の値下げとなる見通しです。
また、企業向けでは平均7%の値下げになります。
・北電齋藤晋社長(31日午後3時半ごろ 北電本店・札幌市中央区)
「値下げの算定にあたっては、泊の再稼働に伴う低減効果を反映したうえで改善活動やDX推進の経営効率化の深堀による費用削減効果を最大限盛り込んだ結果」
2013年以降、北電は3回に渡って大幅な値上げをしていて、その上げ幅は5割ほどに…道民の暮らしには大きな負担でした。
◆せっかく稼働するならもっと下がるイメージですけど…

家族4人、猫3匹と暮らす、土井真理さん。照明を間引いたり、テレビの明るさを下げたり、普段から”節電”に励んでいます。この夏、猛暑に耐え切れず、初めてエアコンを購入しました。先月の電気代は…
・土井真理さん(31日午前10時ごろ 札幌市白石区)
「1万6000円台ですね。去年までは1万2~3千円くらい」
冬の暖房は、灯油ストーブとエアコンの両方を使うつもりだという土井さん。電気代は、1か月で2万円を超すと予想しています。もし「11%」値下げされれば、1か月の電気料金は、夏でおよそ1800円、冬で2200円ほど下がる計算です。
・土井真理さん
「せっかく(泊原発を)稼働するなら、もっと下がるのかなというイメージ、11%がどうしてなのか?20%とか(値下がりすると)だいぶ感覚的に違うと思う」
夫の栄次さんは、原発が多いことで知られる『福井県』の出身です。電気料金の値下げが、泊原発の再稼働の上で実施されることには、ある思いが…

・夫の栄次さん
「(原発を)動かすと核(のごみ)問題は、どうしてもついてまわる」
「技術的に固まっていない、核(のごみ)処理で、もっと将来お金がかかるだろうと予想されるので(値下げではなく)そちらに回してもいいのではないか?理由は安全に核を使うため」
◆背景に地元同意を得たい狙い
旧通産省出身で、北海道文教大学の宮本融教授は北電が「11%程度」の値下げ幅を打ちだした背景には、再稼働に向け、地元の同意を得たい狙いがあるとみています。

・北海道文教大学(国際政治経済)宮本融教授
「(3号機停止後)3回で50%くらい値上げしてきたので、(再稼働後に)11%値下げするのは当然だろう。料金を引き下げてでもとにかく原発を再稼働させてくださいという北電の本気のお願いという姿勢が見える」
◆新規制基準の審査合格で再稼働への道筋が…
北電は31日、泊原発3号機の再稼働後に、家庭用料金をおよそ11%引き下げると発表しました。標準家庭では1000円くらい下がって8300円くらいになるということで、ちなみに沖縄電力や東京電力の水準よりも低くなります。一方、企業向けは7%程度値下げするということです。
北電はこれまで、電気料金の値下げについては一貫して「泊原発が再稼働したあと」との姿勢でしたが、7月、新規制基準の審査に正式合格し、再稼働への道筋が見えてきたことから、今回はじめて具体的な値下げ幅を示したことになります。

北電より前に原発が再稼働した電力会社では何パーセントくらい値下げしたのか調べてみると、北電の「11%」はかなり大きな値下げ幅です。
一方で、北電の電気料金は「全国で最も高い水準」といわれてきました。

この料金は「泊原発3号機」の再稼働が前提です。北電は、再稼働が本格化してから数か月後に値下げできるとみているということです。
再来年、2027年の早い時期の再稼働を目指していますが、その準備の現場にカメラが入りました。
◆運転員資格を持つ社員106人中、4割は運転経験なし

・訓練中の運転員
「みなさん、避難してください」「蒸気の漏洩あり」
ここは泊原発敷地内の「訓練室」。トラブルに対応するシミュレーションが行われていました。
原子炉容器につながる配管が破損し、冷却材が漏えいした想定で、原子炉の破損を防ぐ手順を確認します。
・訓練中の運転員
「25%を目指してトリップ(緊急停止)かけたい」
「原子炉手動トリップします」
泊原発の運転が停止してから13年。運転員の資格を持つ社員は106人いますが、このうちおよそ4割の41人は、実際の運転経験はありません。
北電は再稼働を見据え、訓練を重ねるとともに、ほかの電力会社で研修を行うなど、人材の育成を続けています。

・泊発電所 高島成人発電室課長
「常に課題はある。その課題を無くすために訓練を積み重ねているし、止まってしまったら終わりだと思う。次年度から再稼働に向けてさらに訓練は増えていく」
29日には、道や地元自治体などが、原子力災害を想定した訓練を行いました。毎年実施しているものですが、審査会合の正式合格後は初めて。参加者の緊張感も高まりました。
◆着々と進む「地元同意」の動き

一方で、再稼働の大前提になるのが、原発のおひざもとである泊村、神恵内村、岩内町、共和町の4町村と、道の「地元同意」です。
・泊村議会(31日)
「陳情については採択すべきものと決定しました」
泊村では、31日の臨時議会で「早期の再稼働を求める」陳情書を全会一致で採択。「同意」を正式に決めたのは泊村議会が初めてです。
・泊村 高橋鉄徳村長
「村として総合的に判断した中で、村の考えを議会にしかるべき時期にお伝えしたい」
共和町と神恵内村でも、議会の特別委員会で陳情書が採択されていて、岩内町議会でも議論が進んでいます。
◆意向を明らかにしない鈴木知事に宮本教授「身元保証人みたいのが必要」

そして、31日午後5時半、北電の齋藤社長は道庁を訪れ、鈴木知事に再稼働後の値下げ幅について説明しました。
・北電 齋藤晋社長
「泊発電所の必要性について道民のみなさんに理解いただけるよう、安全対策の取り組みに加え、今回の値下げの水準についても説明を尽くしていく所存でございます」
これに先立ち開かれた定例会見で、再稼働の「地元合意について」尋ねられた鈴木知事。しかし、これまでと同じく、明言を避けました。

・鈴木直道知事(31日午後2時半ごろ)
「電気料金が全国的にも高い水準に北海道はある。道民の生活・道内経済にも大きな影響を与えている。再稼働については道議会・関係自治体・道民の声。道民の声にも様々ある。そういったことも踏まえて総合的に私としては判断したい」
現段階で意向を明らかにしない鈴木知事の胸の内を、宮本教授はこう分析します。

・北海道文教大学(国際政治経済)宮本融教授
「彼は相談相手が必要なんですよ。リスクをとった時に背中を押してくれる身元保証人みたいのが必要。次期知事選と判断が重なってくると延期するということになるかも」
◆今後の再稼働までの手続き

北電は、「地元同意」に加え、規定の認可や避難計画などを踏まえて2027年の早い時期に再稼働したいとしています。
前後して、大規模なデータセンターの稼働や「ラピダス」の量産開始が控えていることになります。
再稼働に向けた審査会合が長期化しているあいだに、エネルギー政策をめぐる動きも大きく変化しました。

政府のエネルギー政策においては「原子力」を重視する方向に動いていますが、使用済み核燃料の再処理工場は完成延期が続き、高レベル放射性廃棄物いわゆる「核のごみ」の最終処分場は決まらないままです。
原子力エネルギーをめぐる課題は山積しています。
 
   
  













