こちらは、愛知県名古屋市の百貨店でお披露目されたクリスマスツリーです。独特の色遣いと墨の線が印象的なこの作品、実はこの夏、五所川原立佞武多に出陣した作品へ新たな命を吹きこみ、生まれ変わらせたものでした。
※「3,2,1メリークリスマス!」

愛知県の松坂屋名古屋店、こちらで11月26日にお披露目されたクリスマスツリー。青森県を代表する伝統文化の一つ、五所川原立佞武多を新たなアートに再生させた作品です。
手がけたのは元・立佞武多制作者の福士裕朗(ふくし・ひろあき)さん。

※元・立佞武多制作者福士裕朗さん
「青森の夏のエネルギーがまだ色濃く紙に残っているクリスマスツリーを、これから寒くなる名古屋の皆さんにぜひ1か月間見ていただいて、北国のあたたかさを感じてください」

このツリー、持続可能な社会を作るための開発目標、SDGsをテーマに制作されました。


その大きな特徴は、原材料にあります。熊本県の製造工場でコットン100%のシャツを作るさいに出た生地のあまり、本来、捨てるはずのこの生地を有効活用していました。
生地は細かく裁断、このあと繊維1本1本にまでほぐしてから漉いて、和紙に再生。この紙を使い、史上初のSDGs立佞武多を制作します。

※元・立佞武多制作者福士裕朗さん(5月28日)
「衣服で紙を作るのを自分自身でも想像できなかったので、もし佞武多の紙を衣服でできた紙で作ったとなれば、世界中に発信できる」

繊維の再生紙は、紙と光の芸術と称される青森の伝統文化を見事に彩りました。

立佞武多は祭りが終わったあと壊されることも多くありましたが、今回はさらに活用しました。切り取った紙を新たな骨組みに貼り付け、クリスマスツリーに生まれ変わらせます。そのこだわりは徹底していて、土台となる幹の部分もSDGsを意識していました。

※元・立佞武多制作者福士裕朗さん
「幹の部分、これも佞武多の廃材を使っている。前の土台についていた紙がついたまま。あえてこのままにしている」

作品のお披露目の場に選ばれたのは名古屋。分割したパーツを松坂屋へ運び込み、高さおよそ6メートルのツリーにくみ上げると、完成です。

※元・立佞武多制作者福士裕朗さん
「名古屋の松坂屋に訪れているお客様の表情を見るのが楽しみです」

SDGsをテーマにした新たなアート作品としてお目見えしたクリスマスツリー。

※訪れた人は
「布だったものから紙ができて、佞武多になったところが感動したことの一つ。かなり大きなギャップで「あり得るか?」と思いました」「アップサイクルでも非常に有意義で未来のためにも非常にいい企画だと思います」

福士さんにとっても、今回のプロジェクトは立佞武多の新たな可能性を切り拓くものになりました。

※元・立佞武多制作者福士裕朗さん
「青森の熱い夏の残り香を感じながら足を止めていただいて、少しでも心が温まってもらって、物を大切にする心が芽生える一つのきっかけになればと思います」

「伝統文化」と「SDGs」が融合して新たな命が宿ったツリー。いま、さらなる輝きを放ち街を行き交う人に笑顔と感動を届けようとしています。


繊維から再生紙となり、立佞武多になったあとも、さらにクリスマスツリーへ活用。SDGsでも意義があるし、出来上がりも素晴らしい。2つの観点からいい取り組みですね。クリスマスツリーは、松坂屋名古屋店で12月25日まで飾られるということです。