■メアリーは奇跡のゾウ

横になって寝ていたメアリーが自力で起き上がれなくなったのです。


南條幸夫さん:
「立ち上がろうとしても立ち上がれない。足が自由にいうことを聞かない。現状を見て、これは難しいだろうな。でも、やれるだけのことはやらなくちゃな、というのが正直なその時の感想でした」


通常、ゾウは1、2時間程度で起き上がります。長時間、横たわったままだと、自らの重さで肺がつぶれ死に至るおそれがあるのです。作業は難航…、ただ南條さんは…。

南條幸夫さん:
「メアリーの意識がはっきりとしてるんですね。これはチャンスがあるなと」


メアリーの体重はおよそ4トン。午前8時ごろから始まった作業は午後にまで及びました。そしてついに…。起き上がれなかった時間は6時間以上。

それにもかかわらず、9年後の今も元気な姿を見せてくれているのです。

南條幸夫さん:
「4トンを超すゾウで獣舎で倒れて、こんなに長生きしたゾウはいないだろうなと。ある意味、本当に奇跡的なゾウだなと」


昼食の時間です。

南條幸夫さん:
「しし唐も畑で採ったやつ。トマトもそうですね」


記者:
「ご自分の畑で?」
南條幸夫さん:
「そうですね」
記者:
「自給自足ですね」
南條幸夫さん:
「そうです、そうです」


60歳の南條さん、実は今年度いっぱいで定年退職です。

仮に再任用になっても後進に道を譲り、ゾウの担当からは離れる予定です。

寒い冬は、一年の中でも飼育に気を遣う季節。


アフリカゾウ舎では、床暖房をつけます。


記者:
「あー暖かいですね」


足の関節のケアも続いています。

南條幸夫さん:
「膝関節用のサプリメントですが、9年前に倒れてから、毎日続けています」


アフリカゾウのメアリー。そして飼育員の南條さん。ともに歩んできた日々です。

南條幸夫さん:
「1年でも長く、1日でも長く子どもたちの前に元気な姿を見せてくれることと、それに伴って、私たちもそうするように管理していくというその使命だけですね。


南條さんが飼育員になったころは、インターネットもないため、全国の動物園を何度も訪ねてゾウの飼育方法を学びメアリーなどの飼育に生かしたとのことです。ゾウは知能が高く、感情もある動物。そんな動物を長く担当すると自らの感情も強くなるということで、南條さん、やはり今年度での退職は寂しい、ただ、獣医師の方や後輩の飼育員が優秀なので安心して渡すことができる、と話していました。