「かかわらなければ私の胸の泉に枯れ葉いちまいも落としてはくれない」

(「大島療養所歌」(1934年発表))
「静けき瀬戸のみどりの大島は…」

歌うことが何よりのいきがい。抜群の歌唱力は沢さんが開く大島青松園コンサートでも度々披露されました。CDを制作したときのエピソードは、今回の本のハイライトです。現在も、95歳の歌声を録音して残したいと奮闘中です。

(沢知恵さん)
「彼のような歌は私には歌えないんですもの。あの純度100%というか。この島に閉じ込められたがゆえに、保たれたことなのかもしれない。幸か不幸かね。

だけれども、彼のあの歌声が人に感動をもたらすというのは、理屈では説明できないんですよね。

私、東條高さんとけんかしたこともちゃんと書いたし。『傷つくことを恐れないでって言いたい』。うん。『人とかかわるって、傷つくリスクがいつだってあるんだよ』って。

でもね。それさえなければ楽に生きられるかっていったらそうじゃなくて。かかわらなければ『枯れ葉いちまい』も、『私の胸の泉に枯れ葉いちまいも落としてはくれない』でしょう。

その『枯れ葉いちまい』かかわるためには、勇気出して、かかわろう。ふふふ」