様々な障害のある人々を中心に活動する、パンク・ロックバンドが岡山にあります。「就労継続支援A型事業所で働く人の、活動の場を広げよう」と結成されました。

その名は「ザ・グリーンハーツ」。岡山にゆかりのある、あのバンドにあやかっています。


■バンド結成は「自分たちで生きていくことのスタート」だった

結成から7年。先日、一つの目標だった場所でのライブに臨みました。
カバーするのは「ザ・ブルーハーツ」の名曲「リンダリンダ」です。


発達障害や精神障害などがあるメンバーを中心に活動する、「ザ・グリーンハーツ」です。


リーダーの戸川将吾さんも知的障害があり、「もやもや病」という脳の難病とも闘っています。


(戸川将吾さん)
「いらっしゃいませ~。お昼ご飯に焼うどんいかがでしょうか~。」


普段、戸川さんが働くのは、岡山市北区の「ありがとうファーム」。知識や技術を身につけて自立を目指そうとする障害者を雇用・支援する、就労継続支援A型事業所です。


(戸川将吾さん)
「楽しいです。いろんな仕事を頼まれて『よくできている』とか言われると、すごく自信がついて『次も頑張ってやろうかな』と思います」

■「ザ・グリーンハーツ」創設者・木庭寛樹さんの思い

この「ありがとうファーム」の有志で結成されたバンドが、「ザ・グリーンハーツ」。岡山市出身の甲本ヒロトさんが所属した「ザ・ブルーハーツ」にあやかり名づけられました。


事業所の創設者・木庭寛樹さんが、「彼らの活動の幅を広げたい」との思いで立ち上げたものです。


(ありがとうファーム 創設者 木庭寛樹さん)
「僕たちが目指している、『自分たちの力で生きていくこと』のスタートとなりました」

■「愛されるリーダーに」 バンド結成が、戸川さんを変えた

戸川さんは、ザ・グリーンハーツ結成直後にリーダーに立候補しました。

(戸川将吾さん)
「お持ち帰りに焼うどんはいかがでしょうか。いらっしゃいませ~」

バンド参加が、戸川さんを変えたといいます。


(ありがとうファーム 荒谷桃子さん)
「何事にもすごく一生懸命頑張りますし、ちょっと仏頂面のときもあるんですけれど、ニヤッとすると可愛い感じだったりとか。みんなに愛されているリーダーだなと思います」


店じまいをすると、仕事場は練習場に変貌。


結成当初は10人あまりだったメンバーも、今では20人を超えました。その活躍を聞きつけ、県外から見学に訪れる人もいます。


(広島からの見学者)
「歌うのも踊るのも、本当に心から楽しんでいるな、というのがすごく伝わってきましたし、それをみんなに楽しんで聞いてもらいたいという気持ちも、すごく伝わってきましたし…。」

■木庭さんが目指したのは、音楽を通じた「共生社会の実現」

この日は、特別支援学校でのライブに向けて最後の追い込みです。

自身も特別支援学校に通っていた戸川さんにとって、同じ境遇の人たちの前でのライブは目標の一つでした。


(戸川将吾さん)
「僕たちの歌を通して、何かが伝わればいいのかな。『元気』とか『やる気』とか『仕事を頑張っていこう』とか。これからの将来に希望を持ってもらいたいな、と思っています」


(ありがとうファーム 木庭康輔代表)
「みんなが持っている高い能力、『幸せになりたい』『自立したい』『社会の役に立ちたい』という思いを社会に対して発信していって」

「『障害のあるなしに関わらず、共に社会参加、社会貢献できる共生社会』...ありがとうファームの使命は、この共生社会を作ることだと」


そしていよいよ、本番の日がやってきました。


(戸川将吾さん)
「初めての場所なので緊張していますが、いつも通りやります」


この日、戸川さんはあるキャップを持ってきました。


(戸川将吾さん)
「これは遺品なんですけれど」