福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える『老舗物語』。今回は、果物のおいしさをそのまま凝縮した珍しい逸品が人気を集める果樹農園です。心を込めて育てた果物を無駄なく、その価値を高めようと、様々な加工品を作り出しています。

フルーツ王国・福島を代表する果物『桃』。遅い品種もいまくらいの時期で終わりを迎えます。それでも、一年中その桃が楽しめるものがあります。

こちらの「のむもも(345円/200ml)」。ギュッと絞った桃100パーセントのジュース。その名前の通り、香りも味も、桃をそのまま飲んでいるかのようなおいしさです。

「のむもも」を作っているのは、福島市飯坂町にある「菱沼農園」

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「現在で(畑の面積は)17ヘクタールくらいあるかな。主に4品目作っていて、サクランボ・モモ・ブドウ・リンゴ。」

東京ドーム4つ分の面積にもなる果樹園で、季節に合った果物を作っています。菱沼農園の始まりは、戦後の80年ほど前にさかのぼります。

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「うちの父親から農業が始まったので、山を手で開墾してそこから農業が始まったの。山だから雪も多いし、あとは獣の害。サルにやられて2年くらいリンゴが全滅になったから。それで山の畑はやめて、平坦部の畑におりてきたの。」

開墾した当時は、害虫や害獣の被害が多く、果物もうまく育たなかったといいます。平地に畑を移したことで、思うような果物の栽培ができるようになり消費者にも、それを安定して届けることができるようになりました。

そうした中で「一年を通して、果物を届けたい」と思うようになったそうです。

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「市場出荷できない規格外のものだったりをジュースしたり、果肉を冷凍にしたり、2つの柱なんですよね。そのジュースを使って煮詰めて、シロップ状の蜜をつくったり、蜜を絡めてポップコーンを作ったり。その蜜の生キャラメルとか。利益を出して経営を成り立たせないといけないから。その辺は大変だよね。」

多くのアイデアから、いまではたくさんの商品が生まれています。中でも、珍しい逸品がこちらの『りんご蜜(1450円/100g)』。インターネットやイベントで大人気!贈り物としても喜ばれているそうです。

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「なぜ・・・と言われても偶然に出来た。リンゴジュースってホットにして飲むとおいしいんだよね。リンゴの香りがして、意外とホットが合う。リンゴのジュースを煮詰めたらどうなるのかな?と思ったら蜜になったんだよね。」。

偶然、温め過ぎてしまったところから、さらに温めるとどうなるのか。そんな発想から生まれたのが『りんご蜜』です。『りんご蜜』は自前の加工場で製造されています。『のむもも』と同じ、無添加100パーセントのりんごジュースだけを使用し、オーブンでゆっくりと3時間ほどかけて加熱し、水分をとばします。水分を飛ばすと、濃い琥珀色に…。

主にりんごジュースのメインの品種になっている「サンふじ」の糖度が14度~16度ほど。それを74度にまで煮詰めます。りんごの甘み・うま味・香りが凝縮したものが『りんご蜜』なんです。

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「「サンふじ」そのものに酸味があって、酸味と甘みのバランスがいいリンゴなので、酸味も凝縮されているんだよね。糖度の75度といったら相当甘いですよ。だけど、『りんご蜜』に関してはそれほど甘くない。さっぱり感のある甘みだね。アイスクリームにかければ、味を引き出しますね。」

他にも、トーストにジャムの代わりに。ヨーグルトや紅茶にちょい足しで甘みや香りをプラスするなど、色々な楽しみ方ができます。」

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「脇役というか、主役ではないんだよね『りんご蜜』は。だから『りんご蜜』を使って何か新しい商品を考えるっていうのがいいでしょうね。」

偶然の発想から生まれ、さらなる広がりを見せる『りんご蜜』。

--菱沼健一 代表(菱沼農園)「はっきり言って、他では真似できないんだよね。原価が高くつきすぎて。原料を仕入れたのでは(採算が)合わないんだよね。だからそれをあえて、モモやリンゴを作っているので、規格外から作るからできる。」

新たな形で福島の果物の魅力を全国に発信しています。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年10月17日放送回より)