福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える『老舗物語』。今回は、一度は閉店したものの、祖父の味を受け継いだ男性が復活させた喜多方市のとんかつ店です。

喜多方市で昔から愛されているお店が『とんかつ栄』です。店内は温かみのある雰囲気で素敵ですね。

店主の植田翔介さん。

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「去年の12月にオープンしました。」

えっ?去年創業したんですか?老舗というにはさすがに新しすぎませんか?

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「元々ここは、先代の祖母と祖父が1949年(昭和24年)にとんかつ栄をやっていて、自分が2代目で再オープンさせました。」

実はこちらのとんかつ栄、1949年・昭和24年に植田さんの祖父母が創業したお店。その当時は多くのお客さんで賑わうお店だったんだそうです。植田さんも学校がお休みの期間はお店を手伝っていたんだとか。そして、植田さんが高校3年の夏、祖母の美津枝さんと、ある約束をします。

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「おばあちゃんを元気づけるじゃないですけど、自分のちょうど進路(を決める)の時で、とんかつ栄を閉店させたくないという気持ちと、(入院している祖母を)元気づけたい気持ちもあって、『(お店を)継いでいいか?』という話をして、祖母が『店商売は大変だけど、いいぞ』と言ってくれた。そこから自分は飲食の道を進んでいった感じで。」

しかし、専門学校の入学式の翌日、美津枝さんは息を引き取り、とんかつ栄は惜しまれつつ閉店。植田さんが美津枝さんとお店に一緒に立つ夢は叶いませんでした。

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「とんかつ栄の記憶を消したくなかったというか、覚えてる方がいる内に再オープンしたいとずっと思ってたので。それで去年っていうタイミングになりました。」

そんな決意が固まった植田さんにある試練が。

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「レシピが残っていなかったので、使っていた調味料と、三姉妹(祖父母の娘たち)の記憶をたどって、みんなで話し合いながらやっと出来上がったって感じですね。」

ついに、去年12月、とんかつ栄を再びオープンさせました。

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「やっと約束が果たせたじゃないですけど、これから続けていくのは大変なんで、そっからとりあえずスタートが切れたって感じですね。」

そんな多くの人たちの思いが詰まったお店で楽しめる人気のメニューが「煮込みカツ丼」。
甘辛いタレがしみたカツと、それを優しく包んでくれる卵のふわふわ加減がたまりません。じんわりと心に染み込んでくる味わいです。

さらに昔からの人気メニューも。これはラーメンですね。ラーメンにとんかつをのせちゃうんですか?

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「これは先代のとき、常連さんが作ってくれたメニューで、
うちカツは、衣が薄くてサクサクなカツなので、『チャーシューの代わりにラーメンの上に乗せてみたらどう?』という一言からできたメニューで。」

あっさりしたスープとモチモチの麺。これだけでも完成されているのに、そこにスープを吸ったとんかつが合わさることで、より深みが増し、うま味も倍増するんです。

--植田翔介さん(とんかつ栄2代目)「おじいちゃんの味に届いて、さらに超えていけるような、とんかつ栄にしていきたいですね。」

多くの人に愛され続けるとんかつ栄。植田さんは祖父に見守られながら、祖母との思いを胸に、今日も店を開きます。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年10月9日放送回より)