昭和天皇の后・香淳皇后の生涯を後世に伝える「香淳皇后実録」がきょう(9日)公開されました。17年の作業を経て完成し、新事実も明らかになっています。

「香淳皇后実録」はきょう(9日)公開され、宮内庁のホームページで午前9時半から全文を閲覧できます。「実録」がウェブ上に公開されるのは初めてです。

■香淳皇后について

香淳皇后は、上皇さまの母で、天皇陛下の祖母にあたります。1903年、久邇宮家の長女として生まれ、当時皇太子だった昭和天皇と結婚。戦争を経験したのち、新憲法下で「象徴」となった昭和天皇の后として激動の時代を歩み、2000年に97歳で生涯を終えました。

■新事実も公開

「実録」には、戦時下の香淳皇后の様子も詳細に記されていて、中には新たに公表された事実もあります。

たとえば、1944年11月から1945年6月まで、香淳皇后がレーダーを探知する兵器などに使われる部品(グリッド)をたびたび製作していたことが記述されています。

当時は、全国各地で「勤労動員」により兵器の部品(グリッド)を作っていたことから宮廷に仕える女官たちも同様に製作にあたっていて、香淳皇后が皇居内の防空施設「御文庫」などでその作業を手伝っていたとみられています。

宮内庁によりますと、製作時期などの詳細まで含めると初公表の記述もあるということで、こうした動静から、「戦時中に全国的に広がっていた労務が宮中にまでおよんでいたこと」がうかがえるということです。

また、▼戦争の傷病者に対し、たびたび病院で慰問をしたり義眼・義肢や包帯を贈ったこと、▼陸軍から取り寄せた兵士のための食事を昭和天皇とともに食べて現場の痛みに思いを馳せたこと、▼1944年、集団学童疎開の際、子どもたちにビスケット41万枚以上を贈ったことなどを改めて記載。

このほか、香淳皇后が結婚前、皇室入りに向けてピアノやフランス語、和歌などの“お妃教育”を受けた詳細なども記されています。

■本の概要

全13冊(凡例含む)計3828ページ。皇室の方々には製本された状態で贈られました。表紙は、香淳皇后のお印(シンボルマーク)「桃」にちなんで桃色です。

資料収集は、側近の日記や関係者への聞き取り、当時の新聞記事などをもとに行われたということです。

「実録」が完成したのは、2014年の「昭和天皇実録」以来11年ぶり。

宮内庁書陵部が2008年から製作を開始し、17年にわたる資料収集・編さんなどを経て、きょう(9日)の公開に至りました。