イスラエルがイスラム組織ハマスとの停戦交渉を仲介するカタールでハマスの幹部を狙った攻撃を行いました。

9日、カタールの首都ドーハで起きた爆発。イスラエル軍は「ハマスの幹部を標的とした精密攻撃を実施した」と発表しました。ロイター通信は、停戦交渉のハマス側代表団トップのハイヤ氏を含む幹部が標的だったと伝えています。

停戦交渉を仲介するカタールへの攻撃。

イスラエル ネタニヤフ首相
「この攻撃は戦争終結への扉を開く可能性がある」

イスラエルのネタニヤフ首相はこのように述べ、正当化しました。一方、ハマス側は“幹部たちは生存している”としつつ、ハイヤ氏の息子を含む5人のメンバーが死亡したと明らかにしました。

また、カタール政府は治安部隊の隊員1人が死亡したと発表。イスラエルの攻撃はあらゆる国際法に明白に違反していると強く非難しました。

カタール ムハンマド首相
「(今回の攻撃は)国家テロとしか言いようがない。100%裏切り行為で、事前に知らされていなかった」

今回の攻撃について、アメリカのトランプ大統領は…

トランプ大統領
「あす(10日)正式な声明を出すつもりだが、私はとても不満だ。あらゆる面からとても不満だ」

その上で、事前に攻撃を知っていたかの問いに対しては…

トランプ大統領
「(Q.事前に知らされていたか)ノーだ」
「(Q.驚きましたか)私は何が起きても驚かない。特に中東に関しては」

これに先立ち、トランプ氏はSNSで「イスラエル軍が攻撃を行っているとアメリカ軍から伝えられた」とし、自らの指示で攻撃をカタール側に知らせたものの、「遅すぎた」と説明しました。そして、攻撃は「ネタニヤフ首相の判断であり、私の判断ではない」と強調しました。

〔Q.ドーハから増尾記者の中継です。〕

増尾聡記者:
この場所から15分ほど車で行ったところに、標的となった住宅があります。先ほど付近に行ってみましたが現場は住宅地で、近くには学校があったり、また各国の大使館が立ち並ぶような場所でした。一歩間違えれば大きな惨事となった可能性があるなかで、攻撃に踏み切ったイスラエルの強硬な姿勢を感じました。

今回の攻撃は、停戦を仲介してきたカタールで攻撃を行うという異例のものとなりましたが、その背景にはいくつかの要因が考えられます。

ネタニヤフ首相はおととい、エルサレムで起きたパレスチナ人による銃乱射事件への報復を理由にあげていますが、ほかにも同じ日にガザでイスラエル兵が多く殺害されたこと。さらには、人質の解放に進展がみられず、国内からネタニヤフ氏に対する反発の声が高まっていることも影響していると考えられます。こうした複合的な要因が、外交的に大きなリスクを承知の上での決断につながったと考えられます。

〔Q.今後のガザ停戦への影響は?〕

増尾聡記者:
ガザでの停戦に向けた状況はこれまでも膠着した状況が続いてきましたが、今回の攻撃で完全に急ブレーキがかかったと言えることができるかと思います。

イスラエルの標的は、まさに停戦案を協議していたハマス幹部であり、ハマスからすれば“イスラエルは停戦を望んでいない”とのメッセージにもなり得るわけです。さらに、仲介国カタールからの信頼は一気に失い、また最大の後ろ盾となるアメリカも不満の声をあげていて、交渉に関わる全ての当事国との関係性を大きく損なったことになります。

カタールは今後も交渉を仲介していくと述べているものの、停戦交渉の枠組みそのものを揺るがすものとなり、停戦の実現は大きく遠のいたと言えます。