■新薬「ゾコーバ」を医師はどう見る?

これについて専門家はどう見ているのか。

防衛医科大学校病院の藤倉雄二医師は「新型コロナの治療の選択肢が増えるのは、とても良いことだと思う。ただ安定供給できるかが今後の課題」と話しています。政府としては既に100万人分は納入しているといっていますが、ここが課題ではないかと見ています。そしてもう1人。国立病院機構の三重病院、谷口清洲院長は「まだデータが十分ではないと考えているので、すぐに治療で使おうとは考えていない」と述べています。

これまでの特例承認は、海外で既に流通していたものを、国内で承認するということです。緊急承認は、流通していないものを承認している、かつ効果や有効性に関しても確定しているものではなく、まだ推定される段階でも承認できると。このようなことも考えにはあるかもしれません。

ホラン千秋キャスター:
松本さん、何人か服用された方の使用感みたいなものを伺うことができたわけですが、これまで風邪薬を処方していたときと違ってゾコーバの方が効果としては、感じられている方が多い印象でしょうか?

国際医療福祉大学 感染症学講座主任 松本哲哉教授:
実際出された3人の例は、内服されてからそんなに時間経たず良くなっているということもありますが、1日後ぐらいに急激に良くなるとしたら、場合によってはプラセボ効果みたいなのもあるのではないかなと思います。

本当の意味で実感できるのは2、3日くらい経ってからかと思います。ですので、そんなに極端に急激にウイルスが減らせるというよりは、明らかにウイルスは減りますが、効果が出るのはもう少し後だと思います。そういう意味では1日後にすごく良くなったというのは、果たしてそこまで効果があるのかなと思っています。

ホランキャスター:
様子を見ながらというところだと思いますが、医師の方々に少し心配な点や課題などを挙げていただきました。松本さんは、こういった課題についてどうお感じですか?

国際医療福祉大学 感染症学講座主任 松本哲哉教授:
おっしゃる通り新たな選択肢が増えるという意味では、今まで使えなかった方にも使えるようになることは非常にいいことだと思います。ただ正直に言って3日前に緊急承認されたお薬です。なのでこれから先、新たなデータが出てくる部分もありますし、そういう意味ではいわゆる新型コロナの検査をして陽性になった人全員が、例えばゾコーバを処方される対象にはならないと思います。

実際にゾコーバを選択されているような結構熱が高かったり、症状が強い人は比較的対象になると思いますけど、単なる鼻水や少しのどがムズムズする程度の人にも、あえて皆さん使いましょうとはならないのではないかなと思っています。

井上貴博キャスター:
お薬についてもですが、ウイルスについての政府や専門家の説明が足りてないのではと感じるところがあります。冬が来ると危険ですというのも3年間言われてわかっているところが多くあって、そうではなくて今の致死率や重症化率もしっかりと提示していただきたいですし、なぜ一部ではなくて全医療機関で受け入れることができないのかなどの説明が圧倒的に足りてない気がするんですけど。

国際医療福祉大学 感染症学講座主任 松本哲哉教授:
最初の頃に比べれば、新型コロナウイルスに対する捉え方もだいぶ変わってきたと思いますので、おっしゃるように多くの医療機関が受診できるような体制に変えていかなければいけないですが、それ自体ずっと今のままというのは確かに大きな問題だと私も思っております。

井上キャスター:
そこを提示していただけないと分断がより深まるというか、風邪という人もいれば、怖いという人もいて、分断が収まらない気がするんですよね。

国際医療福祉大学 感染症学講座主任 松本哲哉教授:
考え方を変えていかなければいけないと確かに思います。