中国の習近平国家主席がチベット自治区のラサを訪問し、政治的安定の重要性を訴えました。

習近平国家主席は、21日に開催されたチベット自治区成立60周年の記念式典に出席するため区都のラサを訪問しました。

記念式典は、かつてダライ・ラマ14世が暮らしたポタラ宮殿前の広場で行われましたが、習主席のスピーチはありませんでした。演説を行ったのは、共産党序列4位の王滬寧政治局常務委員で「チベットは古くから中国の神聖な領土の一部であり、祖国を分裂するすべての企ては失敗する」と述べ、インドに亡命しているダライ・ラマ14世をけん制しました。

これに先立ち習主席は、自治区の幹部らを集めた会議で「経済発展において世界が注目する重大な成果を上げた」と強調。

ダライ・ラマ14世の後継者問題を念頭に、信仰よりも中国共産党への忠誠を優先させる「宗教の中国化」の重要性を改めて強調するとともに、「チベットを統治するうえで政治的安定と民族団結を維持することが重要だ」と述べました。

チベットをめぐっては、今年7月に90歳を迎えたチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が、自らの後継者について死後に生まれ変わりを探す「輪廻転生制度」を続ける方針を発表。中国政府による介入を強くけん制しました。

これに対し中国政府は「決定権は中国政府にある」と主張し、真っ向から対立しています。

今回、習主席が自らチベットを訪問し経済発展などの成果を強調することで、中国政府によるチベット統治の正統性を改めて示すとともに、後継者問題をめぐってダライ・ラマ14世側をけん制する狙いがあります。