身近な疑問や困りごとを調査する『ど~いん新潟』


今回寄せられた疑問は、当初は新潟駅までつながる想定もあった新潟市中央区の地下歩道『万代クロッシング』。
億単位の工費をかけていましたが有効利用はできないのでしょうか?
市の中心部にある巨大な地下空間の疑問を取材しました。

新潟市中央区の万代エリア。JR新潟駅と萬代橋との間にその地下歩道があります。

【記者リポート】「こちらの地下歩道、歩行者が国道を横断できるようにと、25年前につくられたのですが、平日、日中の人通りはまばらとも言えないほど寂しい状態です」

巨大な地下歩道、その名も『万代クロッシング』。

完成したのは1997年。

当時、国道7号は1日に6万3400台の車が通っていました。そのため、歩行者の安全確保と国道の渋滞を防ぐために新潟国道事務所が主体となってこの万代クロッシングが整備されました。

かかった費用は49億円。国が34億、県が12億、新潟市が3億を負担しました。

出入口は、新潟駅方面、古町方面、万代方面などあわせて5か所。エレベーターが2基あり、バリアフリーにも対応。利用者思いではあるのですが、その利用者は年々減少しています。2003年の国の調査では1日7000人が利用していましたが、2009年の調査では、4000人にまで減っていました。

さらに…
【記者リポート】「万代クロッシングのすぐそばにあるこちらの交差点は去年11月からスクランブル化がスタート。地下に降りなくても国道7号を横断できるようになりました」

平日の日中、どれだけ利用者がいるか調べたところ、1時間でわずか30人ほどでした…

【歩行者(70代)】「すごいですね、何かに使えるでしょ。これだけの広さがあるんだから。本当、もったいない、ただこれだけだもん」

【歩行者は(70代)】「もうちょっと有効的な活用があればいいのにね。まさかお店が入るわけでもないですしね」

【記者リポート】「人が行き交うには十分すぎる広さがある地下空間。活用はというと、こちら万代橋の歴史に関する資料のみ展示されています」

実は…万代クロッシングの完成から1年後の時点で市民からはすでにこんな声が上がっていました。

【当時の歩行者は】「もったいない。何するためにこれだけ掘ったのかなって」

「なくなったら困る?」
【当時の歩行者は】「ただ、横断歩道できればいいです」

25年たっても存在価値に疑問符が付くこの広い地下通路。何か活用方法はないのでしょうか?

【新潟国道事務所調査課 一丸結夢 課長】「基本的には道路なので、人が集まるようなイベントを行うことになると、警察や消防といった関係者との協議が必要」

維持・管理している新潟国道事務所によりますと、利用開始当初から人の横断以外の利用は想定していませんでした。そのため、店舗などを構えたり、イベントを開いたりして賑わいを作りたいとなると。人が滞留できる施設に改修するために多額の資金が必要だというのです。

また、「新潟駅前から万代までを地下通路で繋ぐ」という当初の計画は地盤の問題で断念。ここにだけ巨大な地下空間が誕生したのです。

万代クロッシングを巡っては新潟市議会でも度々問題が指摘されてきました。

2006年には…

【佐藤憲 新潟市議(当時)】「巨大な穴でしかありません。造ったものはしようがないのでぜひ有効利用してもらいたい」

今年も…
【小野照子 新潟市議】「管轄は新潟国道事務所ということで、ここを何とかするというのは市レベルのものではないのかなということがよく理解できる。そういっても、この施設は中原市長肝煎りのにいがた2kmのど真ん中にある」

新潟市議会の議事録によりますと、2002年には当時の長谷川義明市長が市政懇談会で「大変お金のかかる工事をやったが、余り十分な効果を上げていなくて中途半端と思っている」と発言したとされています。

新潟市はこれまで駐輪場としての活用方法を探る社会実験を行ったり、地下空間の壁に映像を映し出したりする試みなどを実施。

この他新潟国道事務所と連携して有効活用を模索してきたものの「人を滞留させずに賑わう」策は見出せていないとしています。

新潟市は現在、新潟駅・万代・古町を「にいがた2km」と名付け賑わい作りを進めています。そのエリアの真ん中に位置する万代クロッシングを有効活用したいとしつつ…

【新潟市都市政策部 宮崎博人 政策監】「使えるなら使ってしまえという考え方もあるかと思うが、市民の安全を第一で考えた時に、ただにぎわいで人が集まればいいかというとそうはいかないので、すぐに何かいいアイデアが浮かぶっていうのはまだ難しいかなと思う」

こうした中、道路の有効活用は新たな局面を迎えています。
国は20年、道路空間でのカフェやベンチなどの設置を緩和する『ほこみち制度』を設けて賑わいづくりを後押ししています。

万代クロッシングもこの制度の対象となるそうですが…

新潟国道事務所調査課 一丸結夢 課長】「『ほこみち制度』を活用するにあたっても人が集まって滞留してしまうようなイベントになってしまっては各種法律上難しい状況なので、どういったにぎわい創出ができるか現在検討しているところ」

新潟国道事務所は、「市民の皆様からもぜひアドバイスをいただければと思います」とコメントしています。

最近、この万代クロッシングは新たな形で注目されました。ミサイル攻撃などの際、一時的に避難する『緊急一時避難施設』としての役割です。

「一時避難施設に指定、知ってますか」
【60代】「あ、そうなんですか。それPR不足かも」

ただ、『緊急一時避難施設』の表示はなく、周知は十分ではありません。

こうした避難施設は市内で148か所指定されているため、表示にかかる費用は大きく、そもそも表記方法が決まっていないことから新潟市危機対策課は国に対し「誰が見ても分かる表記を統一してほしい」と要望しているということです。

【60代】「なおのこと日頃から出入りしていないと、急に避難するとなると緊張感も高まるし、分からなかったりもするので、避難訓練するとかみんなでここを整えるとか集まる機会を作るといいのかなって」

49億円の税金で作られた万代クロッシング。これ以上多額の税金を投入せずに「ここにあってよかった」と市民に思われる存在になって欲しいものです。