ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから初めて、トランプ大統領とプーチン大統領が対面で会談しました。停戦に向けた進展はあったのでしょうか。

クリミアで批判も…ウクライナ全面侵攻の思惑

ロシア軍の攻撃によって、破壊されたウクライナ・キーウ近郊の幼稚園の壁。破壊後、小さな男の子が黒帯の男性を投げ飛ばす絵が描かれました。

覆面画家として知られるバンクシーの作品です。男性は柔道の有段者として知られるプーチン大統領を象徴しているとみられています。

プーチン氏が行動を起こしたのは2014年。ウクライナで欧米寄りの政権が誕生したことに危機感を抱き、「ロシア系住民の保護」などを名分に、クリミア半島を武力で併合しました。クリミアは旧ソ連時代からロシア海軍の重要な拠点があります。

この併合で国際社会から強い批判を受けましたが、今度は“NATOの東側への拡大を阻止”しようと、ウクライナ東部の「ロシア系住民の保護」や、ウクライナの兵力を大幅に減らす「非軍事化」などを訴えて、2022年2月、全面侵攻を開始しました。ウクライナ東部は石炭やレアメタルも豊富にあります。

首脳会談前に“最大規模の進軍”のワケ

侵攻開始直後、ロシア軍はキーウの陥落を目指しましたが、ウクライナ軍が撃退。その後、ロシアはドンバス地方がある東部と、クリミアに近い南部の侵攻に力を入れました。2022年9月、この4つの州で形だけの住民投票を強行し「ロシア領」と宣言しました。

8月13日時点で、ドンバス地方はロシア軍がほぼ支配し、南部も大半を制圧しています。戦況は膠着状態ですが、米ロ首脳会談を控えた12日、ロシア軍が東部で「過去1年余りで、最大規模の進軍をみせた」と報じられました。戦況を有利にして会談で強気の交渉を進めたいとの思惑があったとみられています。