殴る蹴るの暴行…2年も続いた“自衛隊パワハラ”の証言

自衛隊でハラスメントに苦しんでいる人は、他にもいる。五ノ井さんがネット上で被害の経験談の投稿を呼びかけると、146人もの現職隊員や元隊員がハラスメントの被害を訴えた。


3年前まで岩手駐屯地に勤務していたAさんも「上官からパワハラを受けていた」という。


取材中にAさんが取り出したのは壊れたメガネだ。


元自衛官Aさん
「飲み会の帰りに殴られた、眉間を」

ヘルメットを被った頭を蹴り上げられたこともあるという。

元自衛官Aさん
「俺の言っていたやり方と違うじゃないか、と言いながら(蹴りを)こうですね」

訓練中、Aさんが作業をしていると、トラックの荷台にいた上官が「やり方が違う」と激怒し、頭を強く蹴ったという。

元自衛官Aさん
「自衛隊の靴は(釘の)踏み抜き防止の鉄板が入っているので、靴自体にそこそこ重量があるので、もうしばらく耳鳴りがするようでちょっと動けなくなってしまった」


2年にわたって理不尽な暴力を繰り返し受けたというAさん。部隊の幹部に被害を訴えたが、一向に対応がなされなかったという。Aさんは次第に、精神的に追い詰められていく。

元自衛官Aさん
「夜も寝られなくて。特に訓練近くなるともうそれが嫌すぎて、睡眠障害じゃないですけど」

■「病むか、死ぬか、辞めてくか」逃げ場がない“自衛隊パワハラ”

Aさんは退職を決意し、問題の上官に伝えることにした。その時の音声には…

上官
「ふざけたことやってんじゃねえぞ、てめえ おい、おい、お前。なめんのもいい加減にしろよ」

元自衛官Aさん
「もう無理なんですって」



Aさんが「退職したい」と伝えて席を立つと、上官は胸倉をつかんで怒鳴り、体を壁に押し付けたという。Aさんは2019年5月、退職した。

元自衛官Aさん
「悪いことする奴と、なるべくそれを報告したくない上官の間で、うまいこと状況が合致すると逃げ場のない状況が生まれる。そうすると病むか、死ぬか、辞めてくか」


Aさんは退職後、公益通報制度にのっとり、部隊の管理運営などを担う「陸上幕僚監部」にパワハラ行為を通報した。すると「調査を始める」という通知が届いた。しかしそれ以来3年、何の連絡も無く、上官からの説明も無いという。