芸歴90年の人間国宝・狂言師の野村万作さん(94歳)のある特別な1日の公演に寄り添い、万作さんが磨き上げてきた狂言「川上」と、人生の軌跡に迫る映画「六つの顔」の舞台挨拶が行われました。
ステージには、万作さんのほか、息子の野村萬斎さん、孫の野村裕基さんが登壇。そして司会は、裕基さんの姉・野村彩也子TBSアナウンサーが務め、親子三代での貴重な舞台挨拶となりました。


イベントは、早稲田大学大隈記念講堂で行われ、万作さんは“私は学生時代、この講堂にしょっちゅう来ておりました。毎年、早稲田祭で、お能や狂言がここで行われておりましたから、懐かしい。そして、ここでこの映画が上映されることは、僕にとっては大変嬉しいことでございます“と、喜びを語りました。

映画の監修にも携わった萬斎さんは“我々は無形文化財ですから。無形文化財“と話し、父の万作さんを、“本物の「国宝」です“と、紹介。大ヒット映画を彷彿とさせる、ユーモアあふれるトークで拍手を浴びました。
そして、舞台芸術である狂言を映画化することについて、萬斎さんは“父の代弁をするなら、自分の芸を形に残したいというのがありませんでしたか?“と、万作さんに問いかける形で説明。すると、万作さんは“もちろんありました“と、うなずきました。

また、裕基さんは“皆さんに撮って近しい映画というものになることで、私どもも万作先生はこういうふうに思っていらっしゃったんだとわかりましたし、戦時中の経験や、この先、未来に向けて万作先生が、どのように狂言の道を歩いていくのか、皆様にもこれからを見据えた映画として観ていただきたいと思いました“と、呼びかけました。

万作さんについて、萬斎さんは“父というより師匠。特殊な家庭であったなと思います。僕たちは、技芸を受け継ぐだけでなく、父が言っていたように、精神を受け継ぐところがありまして、アップデートされていく時代に合わせて、自分たちが何を守り、何を更新していくのか、そのためのチャレンジを惜しまないことを身をもって教えてくれた、そういう意味で先達でもある“と語り、“ずっと背中を見せてきてくれたと思います“と、偉大な父を称えました。

締めの挨拶を求められた万作さんは“(映画が)当たるといいな“と、ひと言。客席からは、笑いと共に大きな拍手が送られていました。

【担当:芸能情報ステーション】