甲子園切符をかけた高校野球・夏の青森県大会は、23日に準決勝が行われます。
去年2024年、あと一歩で優勝を逃した「弘前学院聖愛」は、20日に行われた準々決勝で「八戸工大一」を下し、今大会の準決勝へと駒を進めると共に、5年連続の夏ベスト4入りを果たしました。
甲子園出場を目指す“聖愛ナイン”。
その中でも、一際強い「思い」を持っているのが、チームの司令塔・成田翔音 選手(3年生)です。今大会は、ここまで全試合にスタメン出場中のレギュラーキャッチャー。そんな成田選手は、前回大会では「他チームの選手」としてスタンドから、聖愛が決勝で敗れた悔しさを目の当たりにしていました。
2024年の夏の県大会。
2年生だった成田選手は「柏木農業」の選手として大会に出場していました。柏木農業は、7月に行われた日米大学野球の日本代表にも選ばれ、プロ注目の佐藤幻瑛 投手(仙台大)の出身校でもありますが、毎年、部員不足に悩まされており、今大会も“連合”での出場となっていました。
2024年も部員は7人のみ。本来は単独出場は不可能でしたが“ある制度”を使い、柏木農業は単独出場を果たしていました。その“ある制度”とは、「単独廃校ルール」です。
この制度は、日本高野連が設けた、部員不足の学校が公式戦に出場するための「特別措置」で、5人以上の部員がいれば、合計10人になるまで他の高校から部員を借りて、大会に出場ができます。
成田選手は、この制度を通して、聖愛から派遣される形で柏木農業の一員として前回大会に出場していました。
弘前学院聖愛 成田翔音 選手
「親と話して僕から立候補しました。スタンドで試合を見るよりは、試合に出たかったので迷いはなかったです」
「迷いなく決断した」と話す成田選手。
父・義英さんは、息子が聖愛の選手として大会に出られなかったという事実と葛藤していたこと。そして、試合にでるために前を向く「頼もしさ」も感じとっていたといいます。
成田選手の父 義英さん
「試合に出る経験ができれば良いと思った。(息子は)葛藤があったと思うけれども…。出るからには聖愛に勝つために、まずは1勝目指してがんばってほしかった。いまは、聖愛の選手の一員としてがんばってほしい」
打倒・聖愛を目標に掲げ、柏木農業のグラウンドに週一度、通った成田選手。強豪チームで培った「教え」や、「経験」を惜しみなく柏木農業の選手たちに伝えていく、その経験のなかで成田選手自身も大きく成長できたと話します。
弘前学院聖愛 成田翔音 選手
「トレーニングや練習方法、野球の考え方などを教えました。キャッチャーなので、ピッチャーとのコミュニケーションが大事で、みんなにアドバイスしていた経験がすごく成長につながったと思います。(柏木農業に)行く前と後だと『伝える力』が変わりました」
聖愛の原田一範 監督も、冬にかけて一番成長したのは成田選手と話すほど、今大会での活躍にも期待を寄せています。
弘前学院聖愛 原田一範 監督
「新チームになって、1番成長したといってもいいくらい、柏農さんに行ってから変わった」
成田選手は、柏木農業の一員として挑んだ2024年。初戦、延長戦にもつれる大熱戦のなか、土壇場で同点の適時打を放つも、暑さで足をつってしまい、交代要員がいないことから守備の負担が少ない一塁で強行出場。最後まで戦い抜いたものの、悲願の夏1勝は叶いませんでした。
弘前学院聖愛 成田翔音 選手
「去年はあと1球というところで悔しい思いをした。最後の最後まで野球は何があるかわからないので、1球の重みを感じた。それを感じながら(今大会は)優勝目指してがんばりたい」
レギュラーをつかみとり、聖愛の選手として夏の舞台にかえってきた成田選手。2025年は、聖愛のために戦う決意をにじませています。
弘前学院聖愛 成田翔音 選手
「去年は聖愛を倒すためにがんばってきたけれども、最後の夏は聖愛のためにがんばりたい」
柏木農業は今大会、「五所川原工科」との連合チームとして出場。
1回戦のシードには聖愛が待ち受けていましたが、「青森」に敗れ、対戦は叶いませんでした…。
弘前学院聖愛 成田翔音 選手
「開会式の時に(柏木農業の選手と)『絶対対戦しような』って話していたんですけれども、対戦できなかったので、みんなの思いも背負って勝っていきたい」
共に成長してきた「仲間」でもあり、「ライバル」でもある柏木農業の選手たちの思いも背負って…。成田選手は聖愛の選手として「聖地・甲子園」を目指します。