年間8000台もの救急車を受け入れる東京・新宿の『断らない救急病院』を取材しました。彼らが「救急要請」を断らない理由とは?

■『断らない救急病院』駆け込む患者が続々と「カピバラにかまれた」

東京・新宿の病院。またの名を『断らない救急病院』。処置室は患者であふれかえり病院の前には救急車が列をなす。

患者
「カピバラにちょっと噛まれちゃって」

カピバラに噛まれたというケガから、いま増えているという意外な症状まで。この夏、誰がどんな理由で駆け込んでくるのか?その理由、Nスタが調べてきました。

■タクシーの急な車線変更「3メートル吹っ飛んだ」男性

密着!断らない救急病院。

多くの人が家路を急ぐ午後10時半。

病院に運ばれてきたのは19歳男性。頭は固定されており、腕にも複数のケガが確認できます。

19歳男性
「バイクで走ってたら、タクシーが急に。ブレーキ踏まれたから突っ込んじゃって。普通に3メートルは吹っ飛びましたね」

男性が痛みに耐えながら事故現場を撮影した動画には衝突したタクシー、男性のヘルメット、無造作に倒れたバイクが映し出されていました。

男性によるとバイクで出勤途中、隣の車線を走っていたタクシーがお客を乗せようと急な車線変更。タクシーに追突してしまったといいます。

幸いにも骨折はしておらず、傷口を5針、縫合し止血しました。

すると、事故の一報を聞きつけ父親がかけつけました。

春山記念病院 藤川翼 副院長
「きょうはこのまま1泊入院して」

父親「はい」

19歳男性
「死んだかと思ったよ。本当に。ヘルメット吹き飛んだもん」

父親
「とりあえず、生きていて安心しました」

■「着物脱げず」熱中症

今回、Nスタがカメラを向けたのは東京・新宿区にある「春山記念病院」。
                         
この病院には24時間365日、老若男女、様々な患者が次から次へと運び込まれてきます。

20代女性
「カピバラにちょっと噛まれちゃって」

なんと、カピバラに手を噛まれたという患者から、こぶし大のたんこぶができた女性まで!

病院のモットーは「断らない」。

春山記念病院 藤川翼 副院長
「患者さんも不安だし、患者さんの家族も不安だし、なんなら救急隊もたぶん不安だと思うので、患者を断らないで受け入れていこうと」

午後3時すぎ。病院に運ばれてきたのは20歳の女性。

力が入らないのか、手はダラーンとぶら下がり意識がもうろうとした様子がうかがえます。

春山記念病院 藤川翼 副院長
「大丈夫ですか?いまどんな症状があるんですか?頭痛ね、手が痺れてるのね?ぐるぐるする感じがあるの?」

診断の結果は…

春山記念病院 藤川翼 副院長
「水分補給していないというのが大きい。自分が思っている以上に水分は体の外に出ちゃっている」

そう、「熱中症」でした。この日、1日で女性が摂取した水分は…

20歳女性
「ペットボトル1本飲まないくらい。5口、6口とか。わりと同じような症状が出た事が何回もあって。水分はしっかりとった方がいいのかなと思いました」

危険な暑さが続く7月。増えてくるのが熱中症患者。運ばれてくるのは、気温の高い昼間だけではありません。

日付が変わった午前0時。病院に運び込まれたのは20代の女性でした。かけつけた母親は…

20代女性の母親
「(娘は)駅では本当具合が急に悪くなって、吐き気がして嘔吐してしまったと聞きました。こんな事今までなかったので」

医師によるとこれは「時差熱中症」。体の熱をうまく放出できない状態が続くと徐々に体にダメージを受けて、夜に遅れて症状が出ることもあるといいます。

春山記念病院 藤川翼 副院長
「今日全然水分とってなかったの?」

20代女性
「そうですね。私、基本的には水分取らなくても…」

春山記念病院 藤川翼 副院長
「暑かった?仕事中?」

20代女性
「着物を着ているので。ここ(お腹を)締めているので」

女性は日本料理店で着物を着て働いており、トイレの回数を減らすために水分補給を控えていたと言います。

この日の水分補給はペットボトル半分程度だったと言います。

20代女性
「熱中症とかなった事がなかったので、(夜でも)なるんだなと思ったので気をつけないとって思いました」

約30分の点滴を終え、母親と無事に帰宅しました。

■満員電車で負傷者続出 ドアに挟まれ骨折 押し出されてお尻にケガ

世界一の乗降客数を誇る新宿駅が近いこともあり“電車のトラブルによる患者”が多いのもこの病院の特徴です。

多くの人が出社する午前9時。自らの足で右手をかばうように病院にやってきたのは20代の男性。

救命士
「指先が挟まれたって感じですか?」

20代男性
「そうですね」

満員電車に駆け込み乗車した男性。ドアが閉まる際に指を挟んでしまい、無理やり引き抜いたところ爪が剥がれ大出血をしたと言います。

レントゲンを確認したところ…

春山記念病院 藤川翼 副院長
「ここが薬指なんですけど折れちゃってる」

20代男性
「うわぁー」

男性は指を骨折していました。この日は爪と傷口を縫合。全部で10針ほど縫って止血。

20代男性
「(指が)きれいになってもらえればいいかなと。(今後は)無理して満員電車に乗らないようにしようと思います」

男性の手術は無事に成功したということです。その後も…

80代女性
「よろっとして、それで片足がホームの隙間に入ってしまいまして…」

電車とホームの間に足を挟み膝を骨折した女性や…

春山記念病院 藤川翼 副院長
「どこが一番痛いです?」

50代女性
「右のお尻。はい」

満員電車から押し出され尾てい骨を強打する女性など、電車でケガをした人が数多く運ばれてきました。

■意識がもうろう…実は酔客「私はスーパーサイヤ人」

7月5日、午前11時半。病院に緊張が走りました。

運ばれてきたのは60代男性。意識はもうろうとし、受け答えもままならない状態です。

先生
「頭のCT撮りますね。血出ちゃってるし」

60代男性
「…」

救急隊員
「代々木駅のホーム上で右の前額の方から出血していて、駅員さんからの救急要請」

男性は頭部から出血し、ぐったりとした様子で一刻も早い検査が必要です。

幸いCT検査では脳にダメージはなく、その後、点滴をすること30分。回復し、少し話ができるようになりましたが…

60代男性
「わたし、何気にスーパーサイヤ人的な人間なので…」

ろれつが回っていません。さらにトイレに行くときには…

60代男性
「嬉しいなぁ。お姉さんに手をつながれて。幸せなもんだ」

なにやら、ご機嫌な様子。実はこちらの男性、泥酔し転んでしまったというのです。

60代男性
「家でちょっと飲んでて。7月5日、津波が来るっていう情報をキャッチして、山梨か長野県かどちらかに行こうとしていた時に…寝てました」

酔っぱらってどこでケガしたかは覚えていないそうです。幸い軽傷。医師たちも胸をなでおろしました。

■新宿の路上にナゾの砂山 自転車で突っ込みバッキリ骨折

すっかり人影も少なくなった午前3時半。運ばれてきたのは20代男性。自転車で転び、左肩を痛め、額からは大量の出血が…

男性はカメラの前で突然、怒りをあらわに…

20代男性
「結局、何だったんですかね?」

職場仲間
「いや、なんのトラップなのかが?これ何の砂なのこれ?」

20代男性
「知らねぇよ。普通に訴えられるだろう、これ」     
             
スマホに映っていたものとは?

職場の同僚
「道路に砂の山みたいなの…。土砂みたいなのが…。工事というか、ここに引っかかって。たぶんジャンプ台みたいな形になって、たぶん飛んじゃって」

事故直後の写真を見ると、かけつけた警察官によって砂山はカラーコーンで囲われていますが、男性が通りかかったとき、これがない状態だったといいます。

男性は新宿・都庁周辺の道路を自転車で走行中、道路に置かれた高さ50センチ、幅1メートルほどの砂山に気づかず、突っ込んでしまったといいます。

CT検査をすると…

春山記念病院 藤川翼 副院長
「鎖骨がバッキリ折れちゃっています。手術が必要になっちゃうと思うんです」

男性は左鎖骨を骨折、そして右の眉付近を6針も縫う大ケガを負いました。

男性はアイドルのライブを取り仕切る演出家。本番を1週間後に控えていました。

20代男性
「仕事どうしようって感じです。ライブの演出とかしているので、踊ったりとかもたまにするので。(砂山を置くなら)もうちょっと分かりやすくしてほしかったですね」

番組スタッフが道路を管理する東京都を取材すると…

東京都建設局 第三建設事務所
「事故当時、ここで工事などは行われておらず、砂を運搬するダンプからの落下物によるものと推測しております。警察からの通報を受け砂山を撤去。現在、警察と相談をしています。引き続き道路の適切な維持管理を行っていきます」

『断らない救急病院』いま、このときも患者を受け入れる準備を進めています。